UASB法(up-flow anaerobic sludge blanket)とは嫌気性微生物の自己集塊作用を利用して、活性の高い菌体を沈降性に優れたグラニュール(粒状汚泥:granule)として反応槽に保持する方法で、1970年代末にオランダのLettingaらにより開発された技術です。
①高濃度廃水の処理に適している。
②汚泥濃度を高く維持することが可能である。
④低滞留時間運転が可能。
③グラニュールの生成(スタートアップ)に時間がかかる。
⑤排水基準を満足させるまでは処理水質はよくない(?)。
などの特徴を持っています。
全然、ピンとこない方が多いことでしょう。
なので説明を変えます。
嫌気条件下で、廃水を一定の流速で下から上に流していると、嫌気性微生物によって廃水は浄化されます。
これをずっと続けていると、いつの間にか嫌気性微生物達は増殖し、集まりはじめ、丸くなりキャビア状の黒い粒になります。これがグラニュールという嫌気性微生物のあつまりです。丸くなって、大きくな処理装置の下部に沈殿するので、上から流れ出てしまうことは(基本的に)ありません。
これが繰り返され、グラニュールが増えていけば、処理装置の中はグラニュールが充てんしていきます。処理装置の中は嫌気性微生物が高濃度に保持るのです。
ここからが重要です。
嫌気性微生物達は「増殖が遅い」、「処理速度が遅い」という致命的な弱点を持っているのです。
(酸素を使わないとエネルギー効率が悪いのです!!生化学を勉強すればすぐに分かります。)
しかし、先ほども述べたとおり、かなり高密度に汚泥(嫌気性微生物)が保持されているので、「処理速度が遅い」という弱点を数で補うことが出来るのです。
「処理速度の点では、劣等生の嫌気性微生物達も、たくさん集まれば、好気性微生物たちに太刀打ちすることもできる」と考えるとわかりやすいかもしれません。
しかし、増殖が遅いのはどうにもなりません。
処理装置が安定して運転できるまでにとっても長い時間がかかるのです。
これが最大の弱点です。
これを補うために、一般的に、グラニュールを植種(よそから持ってきて処理装置に入れる)するのが一般的なようです。
好気性処理法と違って、空気を送る必要がなく、電気代も安上がりです。
また、増殖速度が遅いということは、余剰汚泥(必要以上の微生物)の発生が少なく、汚泥処理にかかる費用も節約することが出来ます。
こんな、すばらしいメリットがあるのです!!
ではUASB法について、実際に出題された例題の一つを考えてみましょう。
問 上向流式嫌気性汚泥床(UASB)法に関する記述として、誤っているものはどれか。
(1) 高濃度有機性排水では、活性汚泥法よりも処理速度が速い。
(2) 自己造粒汚泥の生成により、汚泥の濃度が高くなる。
(3) 懸濁性有機物の処理には適していない。
(4) スタートアップは、通常の生物処理プロセスに比較して短期間でよい。
(5) 食品工業排水などの可溶性有機物を含む排水の処理に適している。
答え(4)
(4)以外は先ほども説明したように正しいです。
スタートアップにはとっても時間がかかります。
なので、(4)は間違いです。
この問題は平成14年度水質一種の問題です。
ちなみに『正解とヒント(2005年度版)』には平成14年度水質一種の問題と詳しい解答が載せられていますので、どうぞそれも参考になさってください。
コメント
[…] 僕が公害防止管理者(水質1種)に合格した時には、窒素循環におけるAnammox(アナモックス)最近の役割などは、まだ研究段階で教科書レベルにはなっていませんでした。また、UASB法などの水処理手法も研究室で研究されてはいましたが、広く社会で使われていませんでした。 […]