「海外での仕事」といいますと、
「外国語が出来ないと大変ですよね・・・」というイメージを持たれる方が多いと思います。たしかに、外国語が出来ないと苦労するのは間違いないです。
僕にしても、外国語が出来ないので苦労しました。その経験から英語の勉強を続けています。
でも、
外国語が「できる、できない」
よりもっと苦労することがたくさんあります。
今日は、実際に海外で仕事をしてみて苦労したことをまとめてみようと思います。
1.図面の表記方法が違う
国によって図面の表記の仕方が違うんです。
例えば、世界では図面の基本的な表現のルールとして「第三角法」と「第一角法」という2種類が使われています。日本やアメリカのの技術者は「第三角法」というルールで図面を描きます。ヨーロッパとか中国では「第一角法」という図面のルールが適用されている場合が多いようです。
第三角法と第一角法の違いは説明は以下のYOUTUBEの動画をご覧ください。
技術者にとって「図面の表記方法が違う」ということは「言葉が違う」のと一緒くらい混乱を招くことなんです。国によって図面の描き方のルールが違うことが、トラブルを招く、場合によっては、喧嘩になるというような事例も多いようです。
2.気がついたらやめていく人が多い
日本では、終身雇用制度の考え方が根強いですが、諸外国では転職を積んでキャリアアップや給料アップを狙うのが前提のケースが多いです。
そのようなわけで、
せっかく、仕事がうまくいくようになったのに、気がついたら相手先の担当者がやめてしまって、また最初から人間関係と仕事の仕組みを築きな直さなければならない。。。ということが多いです。
よく、「人に仕事をつけてはいけない、仕事に人をつけるのだ」といわれることが多いです。これとても大切なことで、「人に仕事をつけてしまう」とその人が急にやめたときに大変なことになるんですよね。日本では、終身雇用が前提になっているので人に仕事をつけてしまっている企業がたくさんあると思います。
このため日本人は、頭の深層部で「人に仕事をつければいいや」と思ってしまうことがあります。でも、諸外国で仕事をすると、人は突然、やめます! 絶対、「仕事に人をつけなければなりません」。
そのためには、業務標準やフローの作成、「この人にしかできないという仕事」をなくすこと等、事前に対策をする必要があります。
繰り返しますが、外国では人は急にやめます。やめたときに、事業が継続できる体制を常に整えておきましょう。
3.材料のサイズや規格が違う
材料のサイズや規格が違うことは大きな問題になります。
例えば日本ではJIS、中国ではGB、アメリカのAISI、ドイツのDINなど。。。いろんな企画があります。当然、日本ではJIS規格の材料が最も手に入りやすいです。
では、サイズが違うとどんな時、問題になるのでしょうか・。
【事例1】
例えば、100mmの丸棒鋼材を旋盤で機械加工して90mmのシャフトを製作するとします。これを、別の国(A国という発展途上国)で作ろうとしたとします。発展途上国なので、コストが下がるだろうと予測しました。
A国の規格では100mmの丸棒鋼材は存在しません。110mmの丸棒鋼材しかないようです。仕方なく、110mmの丸棒鋼材を旋盤で機械加工して90mmのシャフトを作りました。
そうすると、A国で製作した場合、
本来100mmの材料を使用予定 ⇒ A国では110mmの材料を使用
のため
材料費のコストアップ、加工量が多いため加工時間のアップが発生します。
すると、あれあれ・・・
発展途上国で製作すれば安くなると思ったのに、逆に高くなってますよ??
という問題が頻発するのです。
【事例2】
お客さんの要望 もしくは 法律の規制で「○○規格の材料しか使用できません」というケースがあります。例えば、「JIS規格材料しか使えない」としましょう。その部品を、コストダウンのため発展途上国のB国で製作することにしました。
しかし、B国ではJIS規格材はなかなか手に入りません・・・なんとか、手に入りましたがなんと、材料費が2倍になってしまいます。
すると、あれあれ・・・
発展途上国で製作すれば安くなると思ったのに、逆に高くなってますよ??
という問題が頻発するのです。
なお、【超便利!?】中国GB規格の鉄鋼材料の寸法と公差を調べられるサイトまとめ という記事を作成しておりますので参考にしてください。
4.リードタイムが長くなりキャッシュフローが悪化する
確かに海外で調達して、日本に持ってくるとコストダウンになるケースも多いです。でもリードタイムはどうでしょうか? 「日本に輸入するときに数週間から1ヶ月かかる」ということがありますよね。そうすると、部品完成までのリードタイムが長くなってしまいます。
リードタイムが長くなるということは、
費用が発生してから、費用を回収できるまでの期間が長くなる
ということですから、キャッシュフローが悪化しますよね。
それで、コストとは下がったようにみえるけど、キャッシュフローが悪化し会社にお金が無くなってしまう・・・というケースもあります。
なお、リードタイムには様々な定義があります。ここでは、多く触れませんが、参考に以下を抜粋しておきます。
リードタイムの定義
・発注してから納入されるまでの期間。調達期間ともいう。
・素材が準備されてから完成品になるまでの期間
(JIS Z 8141-1206および生産管理用語辞典より)
生産管理用語辞典
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by カエレバ
5.え!?そんなに休むの?文化が違いすぎる
文化が違うというのは、とても大きな障壁になります。
文化の違いで驚くのは日常茶飯事。たとえば、中国では旧正月(春節)という行事があります。この行事は中国の方にとっては非常に大切です。親戚みんながあつまって、大々的に祝います。
とっくにびっくりするのが、特に中国の田舎の方で、
「春節で1カ月休みまーす」
という方が、結構おられます。1ヶ月ですよ!1ヶ月。
で、経営者も簡単に「OK」しちゃうのです。
中国では家族や親戚との行事は絶対に大切にしなければなりません。これが常識なんです。「春節だけど忙しいから仕事してね」と日本人的な感覚を持っていると大変な事になります。
従業員が全くいうことを聞かなくなる、やめてしまう・・・こんなことになってしまいます。
文化の違いをしっかり理解して、それを受け入れることのできる「器の大きな人間」「器の大きな企業」にならなければいけません。
6.良くも悪くも為替変動の影響が多い
為替変動で一気に経営方針を変えなければならないことがあります。円安になって、海外生産のメリットが無くなって、「工場撤退します!」なんてことは日常茶飯事です。いやいや、本当に変動がはげしいです。数%の変動なら、吸収できますが10%を超えるといろいろと問題が出てきますね・・・・。
7.日本の家族と一緒に過ごせない
海外出張や駐在になると、家族と過ごす時間が少なくなり問題になります。家族仲が悪くなり離婚に発展する場合もあるようです・・・。恐い。
8.その他
その他の中に、語学力、生活上の辛さ(衣食住)が入ってくると思います。
どうでしたか?
まだまだ苦労はたくさんあります。書けばキリがありません。また、おいおいとまとめていこうと思います。皆さんからの海外生産拠点での苦労話もお待ちしています(笑)。
【海外で生産管理をされている方へ】
技術士(経営工学部門)を取得してキャリアアップできます。私も保有していますので、質問があれば相談してください(私が技術士になった体験談)。
私は語学力を身に着けるために、毎日、オンライン英会話をしています。
下のリンクを参考にどうぞ。