中国で仕事をすることが多い僕です。
特に僕の場合、中国の製造現場に行くことが多いです。中国の製造現場に行くと苦労することが多いんですよね。その中の一部を「海外生産拠点における生産マネジメントで苦労話 あるある・・・」にも書いております。
特に、中国で仕事をしていると、
「なんでそうなっちゃうの?」
と言うような問題がたくさん発生します。
この記事では、日本人が中国の製造現場に行った時に「起こりがちな問題」について語ってみようと思います。
没問題(めいうぇんてぃー)は信用できない!
中国の製造現場でよく聞かれる言葉に、
「没問題(めいうぇんてぃー)」と言う言葉があります。
例えば、
「進捗(スケジュール)に問題ありませんか?」
「この製品を製作する生産技術に問題がありませんか?」
「品質に問題はありませんか?」
等と言うことを質問するとします。
すると、結構な割合で、
「没問題(めいうぇんてぃー)」
という返事が返ってきます。このは「全然問題ないよ」というニュアンスの意味です。英語で言うと「No problem」という感じ。
僕も最初は、「あー良かった安心・・・」と思っていました。
でも、簡単に「没問題」と言っているときこそ気を付けなければない。大抵そういうときこそ、問題や不具合が発生するんです。これ不思議なもので、中国のどこに行っても「没問題」が「一番の危険のシグナル」。
これは、結構沢山の方が経験されているのではないかなぁ・・・・・と思います。
思ったものと全然違う製品が出来た!
中国製品は「品質が悪い」と言うイメージがあります。
しかし、中国はいまや「世界の工場」のポジションです。中国無しに製造業を語ることは出来ないと言っても過言ではありません。それに、中国でも非常に高品質の製品はたくさんあります。僕の実感としては、中国の方は「やればできる」。そして、かなり高い技術力や技能を持っておられます。
しかし、同じ図面で同じ部品を「中国で生産した時」と「日本で生産した時」に全く違うような見た目の製品が出来上がることは当たり前。
「うううーーん。何でこんなことが起こっちゃうんですかねぇ。やっぱり中国で製作すると品質が悪いんだろうなぁ・・・」と僕は最初、非常に疑問に感じていました。
作業者(ワーカー)が定着しない
中国の工場で仕事をしていると、作業者(ワーカー)の入れ替わりが激しいことに気づきます。日本のように、高校卒業してから同じ職場でずぅうっと働き続けているなんてことはあまりないようです。ある職場でスキルを身に着けたあとは、もっと待遇の良い職場に転職する・・・なんてのは結構当たり前のことです。
これは僕たちからすると、非常に大きな問題につながります。
長い時間をかけて一生懸命、作業者を育てて一人前にしてきました。そして、工程や品質が安定してきました・・・。
でもですよ、
そういう作業者がいきなり転職していなくなったりするんです。
そうなると、品質が急に悪化したり、場合によっては製品が一時的に製造不可能になってしまうことだってあります。
最近、結構経験しているのは、「春節(旧正月)」や「国慶節」の連休が終わっても作業者が出勤してこない!ということ。
このような現象も、中国の製造現場ではけっこう「あるある」なんですよ。
一生懸命教育した作業者が、いきなり出勤しなくなると結構なショックに襲われます。あーこれはいつまでたっても慣れないなぁ・・。
問題があるのは日本人のほう!
中国で仕事を始めたばかりの時は、正直、
「もう中国人は!!これだから中国で仕事をしたくないんだ!」
なんて思っていました。
中国人のほうに「問題がある」「変だ」「おかしい」というとらえ方をしていたんですよね。
しかし、最近は、
問題があるのは、おかしいのは日本人の方かもな?
という考え方に、だんだん変化してきました。
なぜ、そう思ったかというと、中国で長く仕事をしていますが、
- 起こる問題には決まって同じようなパターンである
- 地域は変わっても、会社が変わっても同じ問題が発生する
- 日本人の担当者によって、大きな問題を発生させずに中国での生産活動を上手く続けられているケースもある
ことに気づいたからです。
要は、僕(日本人)の側が何かを変化させれば、中国の製造現場を上手くマネジメントしていくことが可能なのではないか? そういう感覚になってきたのです。
そして自分なりに工夫をしながら、中国生産業務をいろいろと改善してきました。
- スケジュールの進捗報告をもらうときには現物の写真を送ってもらう(We chatで送ってもらうのが一番簡単)
- 細かいことでも文章にする。例えば議事録はこまめに残す。部品の生産を始める前には作業標準書やQC工程表を作成する
- 誰がやっても同じような品質、出来栄えで製作できるように治具を使用して簡単に生産できるように工夫したり、自動化を織り込む
- 図面には「全く不明点が無いように」すべてを表現する。日本では幾何公差を入れずに済ませるような箇所でも、出来るだけ幾何公差を記載する。
- 中国のワーカーと上手く付き合うために、みんなと一緒の食堂でご飯を食べる(日本人は自分たちだけいい食事をしたりしがちだが、そこから壁が生まれているような感覚があった)
- 出来るだけ中国語を覚えて、一生懸命使う。そうすると、作業者が何が言いたいかだんだんわかってくる
- 中国の方が大切にしている価値観、例えば「家族や親せきを大事にする」ことをしっかりと理解してあげる。「親戚の行事で休暇を取りたい」などというケースには、嫌な顔をせずに、すぐに許可してあげる
これらの工夫をすることで、ずいぶんと中国で仕事がやりやすくなってきました。
そして、生産技術や品質も高まってきました!!
同じようなことが「機械設計」の雑誌に書いてあった!
僕の会社では「機械設計(日刊工業新聞発行)」という月刊雑誌を購読しています。
その雑誌の中で2019年7月から「不良品 トラブルをなくす 中国メーカーのトリセツ」と言う連載記事が掲載されています。
この記事は中国生産のコンサルタントをされている「小田淳さん(ホームページ)」が書かれている連載です。この連載の中には、僕が非常に共感する内容が書かれています。僕が肌で感じていたことを、文章で表現してくださっている・・・本当に良い記事です。
少し、内容を紹介したいと思います。
世界の人口の5.4人に1人は中国人である。一方日本人は57人に1人に過ぎない。これは極端な考え方かもしれないが、世界の人口比率で考えると「普通~のハズなのに」といった場合、中国人の方がより「普通」に近い(機械設計 2019年8月号より)。
日本の設計者はこれまで日本の匠の職人がいる部品メーカでモノづくりをしてきた。曖昧な表現を含む会話や情報(図面)の出し方をしても、「あうんの呼吸」で理解してもらっていた。しかし中国では「言われたこと(だけ)をする」のが基本的な仕事の仕方であることを理解すべきである。
(機械設計 2019年7月号より)。
中国では作業者のスキルに依存する手作業は厳禁である。一般的に作業者のスキルが低いこともあるが、入れ替わりが激しくせっかくスキルを身に付けてもすぐにいなくなってしまう。よって作業者のスキルに依存せず、「誰」が作業しても「同じ作業」になるよう、手作業の工程では治具を作製する必要がある。(機械設計 2019年7月号より)。
中国では作業者の入れ替わりがとても激しく、筆者が最も多く関わった成形メーカでは、春節の前後で15%の作業者が入れ替わる。通年では30%以上の作業者が入れ替わるのである。(機械設計 2019年8月号より)
機能すれば問題ない・・・
「このバリをなくすように成形メーカに依頼してね」とごく当たり前のつもりで言った。ところがその設計者は「この部品は製品の内部でユーザーからは見えないし、この部品はちゃんと機能するから、このバリは問題ない」と言ってきた。
(機械設計 2019年10月号)
おおおーーまさにその通り。僕が中国で経験してきた、感じてきたことと同じ内容が上手く文章で書かれています。非常に素晴らしい連載だなぁ・・・と感じました。
興味がある方には是非読んでいただきたい内容です!
機械設計は良い雑誌ですね。良い連載が多い!
我々、日本人の方が変化しなければ!!
結論として、中国で生産活動をしていくためには、
「僕たち日本人の方が変化しなければ、良いモノづくりはできない」
と確信しています!
そういうイメージをもって、これからも中国での仕事を頑張っていこうかな!と思います。そして、中国業務に詳しい技術士になっていきたいなぁと考えてます。