製造業で求められる「デジタル人材」とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていくうえで、必要になってくるのはIT技術などを使いこなせる「デジタル人材」です。特に日本では少子高齢化に伴い人材の確保が大きな課題となってきています。

その中で、製造業ではどんな「デジタル人材」が求められているのでしょうか?

そしてどのようにデジタル人材を育てていこうとしているのでしょうか?

2020年の「ものづくり白書」などから考えてみました。

デジタル人材にはどんな力が必要?

部門間を連携を促進できる力が必要

デジタル人材には、

「業務全体を俯瞰して部門間の連携を促進する力」が必要とされています。

今までの製造業で行われてきた「効率化」や「改善活動」などは、それぞれの部門が独自で取り組んでいることが多く「部分最適」となってしまうことが多い傾向がありました。

しかし、デジタル人材には各部門の個別最適ではなく全体最適を考慮してビジネス全体を俯瞰する能力も重要です。

つまり、

部分最適 → 全体最適

への転換ができる人材が必要とされています。

デジタル人材には当然、ITやIoTの技術力は必要です。

しかし、その技術力を「全体最適化」することに向けられてこそ、DXが本領を発揮します。

ですから、これからのデジタル人材に求められる能力としては以下のことが大切だということができると思います。

  • 業務全体(エンジニアリングチェーン、サプライチェーンなど)を俯瞰してみることができる
  • 全体最適の考え方をもって部門間を連携・調整できる

こういう考え方を「システム思考」ということができます。

まさに、生産管理や経営工学で求められている考え方です。

数学の力

ものづくり白書2020年版には以下の記載があります。

今後、製造業においてデジタルトランスフォーメーションが進み、IoT、AI等のデジタル技術が活用されるようになっていくに従って、これまで以上に必要性と重要性が増してくると思われる人材は、数学の知識や能力を有する人材である。

ここでいう「数学」は、純粋数学、応用数学、統計学、確率論、さらには数学的な表現を必要とする量子論、素粒子物理学、宇宙物理学なども含む広範な概念であり、文部科学省・経済産業省「理数系人材の産業界での活躍に向けた意見交換会」報告書「数理資本主義の時代-数学パワーが世界を変える」(2019年3月26日)における「数学」の定義や、文部科学省科学技術政策研究所科学技術動向研究センター報告書「忘れられた科学-数学」(2006年5月)における「数学研究」の定義をほぼ踏襲している。

例えば、数学の能力は、デジタル化した製造業に不可欠なデータ分析、モデリング、シミュレーションにおいて大いに発揮される。特にAIと人間との協調・協働においては、数学がAIの制御を始め、学習データや推定結果の信頼性を高めるために必ず必要となる。さらに、AI自体に画期的な技術革新を起こすともなれば、高度な現代数学の能力が決定的に重要になるであろう。AI以外にも、VR、AR、マテリアルズ・インフォマティクス、量子暗号や量子コンピュータ等、製造業に大きなインパクトをもたらすと予想されるデジタル技術革新の多くが、高度な数学の能力を要するものである。

(ものづくり白書2020年版より)

要は、DXを進めていくにあたって、データを扱ったりAIを使ったりしていく中で数学的な能力は非常に大切になっていく。そして、高度な数学的能力を持っている人材が必要だということです。

しかしながら、日本では数学を専門とした博士課程後期課程修了者の多くが「高等教育機関」に進むことが多く、民間企業に就職する者は約12%と言われています。

「産業界に数学の専門家がいない」

これが重要な課題となっていると言えます。

数学の得意なデジタル人材の確保は非常に困難であるため、

  • 高い報酬を用意する
  • 「出る杭を伸ばす」ような人材育成
  • 産学連携した人材育成

などが進められています。 今後の成果が期待されます。

どのようにデジタル人材を確保しようとしているのか?

それでは、製造業各社はどうやってデジタル人材を確保しようとしているのでしょうか?

ものづくり白書(2020年)では、以下のように記されています。

今後のデジタル技術の活用を担う人材確保の方法について、デジタル技術を活用している企業は、「自社の既存の人材をOJT(職場での仕事を通じた教育訓練)で育成する」(57.0%)、「自社の既存の人材をOFF-JT(外部セミナー・講習等への参加など職場を離れた教育訓練)で育成する」(51.5%)、「ICTなどに精通した人材を中途採用する」(28.3%)の順に回答した企業割合が高く、デジタル技術未活用企業では、「自社の既存の人材をOFF-JT(外部セミナー・講習等への参加など職場を離れた教育訓練)で育成する」(39.5%)、「自社の既存の人材をOJT(職場での仕事を通じた教育訓練)で育成する」(29.7%)、「ICTなどに精通した人材を中途採用する」(23.9%)の順に回答した企業割合が高く、デジタル技術を活用している企業、未活用企業ともにOJTやOFF-JTを活用し、自社でデジタル技術を活用できるものづくり人材を育成しようとする傾向がみられる。

つまり、

  • OJT
  • OFF-JT
  • 中途採用
  • 新卒採用

などによって、デジタル人材を確保しようとしているのです。

しかしながら、前述したように、

そもそも日本の産業界には「数学が得意で、システム思考をもったデジタル人材」が少ないです。ですから、産学官連携した取り組みが必要になってくると思います。

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