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汚水処理特論
はじめに 生物学的処理とは
UASB法とは UASB法(例題)
活性汚泥法について COD検定
BOD測定 COD測定
H17年度 問題より H19年度 問24より

はじめに


汚水等の処理は以下の4つに分類することができます。


@物理的方法
A物理化学的方法
B化学的方法
C生物化学的方法



汚水等、及び汚泥の処理はこれら4つの方法によって処理されていると言っても過言ではありません。
このことをまず頭に入れておいてください。


汚水等処理技術を全体的に把握するために、お勧めの教材としては『よく出る水質問題 』が挙げられます。是非、参考になさってください。もちろん、水質関係公害防止管理者の試験全体も網羅されています。


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生物学的処理とは


 まず最初に、生物学的処理について説明いたします。
最初に生物学的処理を説明する、特に大きな意味はありません。
(しかし、管理人は公害防止管理者水質試験の中で一番得意な分野は、生物学的処理です。一番、質問に答えやすいのはこの分野です。)


生物学的処理は@好気性処理A嫌気性処理B嫌気と好気の融合による処理法に分けられると思います。


@の好気性処理方法として一番出題率が高いのは、活性汚泥法です。
これは確実に押さえておきましょう。
そのほかにも、生物膜法なども重要項目です。


Aの嫌気性処理法としては汚泥消化などがメインに出題されます。
しかし最近の傾向として、UASB法の出題も見受けられます。この処理方法が注目され始めたのは、近年のことなので、まとめてある書籍等が大変少ないです。それで、次回の水質塾ではこのUASB法を取り上げてみたいと思います。(詳しく調べてみると『新・技術と法規の本にも多少解説がありました。)


Bの嫌気と好気の融合による処理法には主に脱リン、脱窒等が挙げられます。これらもチェックしておきましょう。


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UASB法とは


 UASB法(up-flow anaerobic sludge blanket)とは嫌気性微生物の自己集塊作用を利用して、活性の高い菌体を沈降性に優れたグラニュール(粒状汚泥:granule)として反応槽に保持する方法で、1970年代末にオランダのLettingaらにより開発された技術です。


@高濃度廃水の処理に適している。
A汚泥濃度を高く維持することが可能である。
C低滞留時間運転が可能。
Bグラニュールの生成(スタートアップ)に時間がかかる。
D排水基準を満足させるまでは処理水質はよくない(?)。


などの特徴を持っています。


全然、ピンとこない方が多いことでしょう。
なので説明を変えます。



 嫌気条件下で、廃水を一定の流速で下から上に流していると、嫌気性微生物によって廃水は浄化されます。
 これをずっと続けていると、いつの間にか嫌気性微生物達は増殖し、集まりはじめ、丸くなりキャビア状の黒い粒になります。これがグラニュールという嫌気性微生物のあつまりです。丸くなって、大きくな処理装置の下部に沈殿するので、上から流れ出てしまうことは(基本的に)ありません。
 これが繰り返され、グラニュールが増えていけば、処理装置の中はグラニュールが充てんしていきます。処理装置の中は嫌気性微生物が高濃度に保持るのです。


 ここからが重要です。


嫌気性微生物達は「増殖が遅い」「処理速度が遅い」という致命的な弱点を持っているのです。
(酸素を使わないとエネルギー効率が悪いのです!!生化学を勉強すればすぐに分かります。)


しかし、先ほども述べたとおり、かなり高密度に汚泥(嫌気性微生物)が保持されているので、「処理速度が遅い」という弱点を数で補うことが出来るのです。


「処理速度の点では、劣等生の嫌気性微生物達も、たくさん集まれば、好気性微生物たちに太刀打ちすることもできる」と考えるとわかりやすいかもしれません。


しかし、増殖が遅いのはどうにもなりません。
処理装置が安定して運転できるまでにとっても長い時間がかかるのです。
これが最大の弱点です。
これを補うために、一般的に、グラニュールを植種(よそから持ってきて処理装置に入れる)するのが一般的なようです。


好気性処理法と違って、空気を送る必要がなく、電気代も安上がりです。
また、増殖速度が遅いということは、余剰汚泥(必要以上の微生物)の発生が少なく、汚泥処理にかかる費用も節約することが出来ます。
こんな、すばらしいメリットがあるのです!!


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UASB法(例題)


UASB法について、実際に出題された例題の一つを考えてみましょう。


問 上向流式嫌気性汚泥床(UASB)法に関する記述として、誤っているものはどれか。
(1) 高濃度有機性排水では、活性汚泥法よりも処理速度が速い。
(2) 自己造粒汚泥の生成により、汚泥の濃度が高くなる。
(3) 懸濁性有機物の処理には適していない。
(4) スタートアップは、通常の生物処理プロセスに比較して短期間でよい。
(5) 食品工業排水などの可溶性有機物を含む排水の処理に適している。


答え(4)


(4)以外は先ほども説明したように正しいです。
スタートアップにはとっても時間がかかります。
なので、(4)は間違いです。


この問題は平成14年度水質一種の問題です。
ちなみに『』正解とヒント(2005年度版)には平成14年度水質一種の問題と詳しい解答が載せられていますので、どうぞそれも参考になさってください。


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活性汚泥法について


活性汚泥法は、公害防止管理者の試験の中でも最も基本的な技術の一つです。
この方法は生物学的な汚水の処理法で、「好気性」処理です。
以下に一般的な活性汚泥法のフローを示しています。





活性汚泥法は主に
  • 最初沈殿池
  • エアレーションタンク
  • 最終沈殿池
の三つから成り立っています。


最初沈殿池では、流入してきた汚水中の固形物を除去します。


エアレーションタンクでは好気性微生物である「活性汚泥」が汚水中に溶解している有機物等を食べて処理します。この微生物群は「好気性」なので酸素を
ポンプで送ってやらなければなりません。一般的にこのタンクの中の微生物濃度は2000mg-MLSS/L程度です。


最終沈殿池は活性汚泥を沈殿除去する沈殿池です。エアレーションタンク内で、活性汚泥が有機物を食べて増殖します。その微生物群をここで沈殿効果により除去してやるのです。


ここで、沈殿した汚泥の一部をエアレーションタンクに返送してやります(設計のMLSSの濃度になるように)。
こんな感じで、汚水の処理ができます。
大切なのでよく覚えておいてくださいね。
さらに、「バルキング」や「高度処理」についても勉強しておくと良いと思います。
詳しくは、『新・技術と法規』を参考にしてください。


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COD検定


●質問
 工場排水のCOD検定においてCODが100mg/Lと推定される時、試料何mLを用いて試験するのか?
 (1) 1.0  (2)2.0   (3)4.0   (4)8.0   (5)15.0


●解答
 おそらくCODmnのことですね。酸化反応式は恐らく参考書に載ってると思います。
 ちなみに反応後の過マンガン酸カリウム溶液が添加量の4.5〜6.5mlになるようにしなければいけないので、試料の採取料(V)は
 V=4.5(または3.5〜5.5)×(1000×0.2)/予想のCODmnの値
となります。(技術と法規より)
 よって(4)ですね。
 測定値が10mg/Lくらいになるようにすると考えていれば、特に式の暗記等も必要ないのではないでしょうか。


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BOD測定


●質問
 BOD1000mg/Lの工場排水をBOD除去率約95%の処理槽を通して排出した。この排出液のBODを測定する為、試料の希釈倍率(倍)として適切なものはどれか?
 (1) 3   (2) 10   (3) 30   (4) 50   (5) 100


●解答
 このBODは50mLですね。
 この場合の式も技術と法規より
 V=((3.5〜6.2)×1000)/予想のBOD値mg/L
なので100mLですね。
 試料を1000mLにメスアップ後、測定値が3.5〜6.2mg/Lになるようにすれば良いです。
 面倒くさいので5くらいと考えていれば良いと思います。


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COD測定


●質問
 ある工場排水のCODを測定する為に試料を10倍に希釈したもの50mLを用いて試験したところ、逆適定に要した5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液は5.50mLであった。この排水のCOD(mgO/L)はいくらか?ただし、空試験は0.00mlとする。
 (1) 220  (2)180  (3)55   (4)22   (5)11


●解答
 CODの算出式
 COD=f(a-b)×(1000/V)×0.2
です。恐らく技術と法規とかにものっていると思います。
a:滴定に要した5mmol/L 過マンガン酸カリウム溶液
b:水を用いた試験の滴定に要した(空試験)5mmol/L 過マンガン酸カリウム溶液
f:5mmol/L 過マンガン酸カリウム溶液のファクター(この場合は0で良いと思います)
V:試料
に全てを代入すれば22mgO/mL
10倍して220となります。


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平成17年度 問題より


掲示板で質問があった、平成17年度 水質1種 汚水等処理技術一般 問15の解説です。


固形物濃度3%(質量)の汚泥200トンを脱水して水分80%のケーキとしたとき、ろ液量(トン)はいくらか。ただし、ろ過助剤量は無視するものとする。
  (1) 150   (2) 160   (3) 170   (4) 180   (5) 190


 ここで一番重要になってくる考え方は汚泥中の「固形物重量」は常に一定ですよと言う考え方です。
まず、汚泥200トン中に固形物濃度は3%なので、固形物重量は「常に」6トンです。
 式 200×0.03 = 6


 この汚泥を脱水したとき、水分が80%まで減少しました。つまり固形物重量が全体の3%→20%になったのです。
 つまり今までは、汚泥全体の6トン(固形物量)が3%だったのが、脱水後、6トン(固形物量)が20%になってしまいました。これは「水が減ったから」なんですね。
ここでのポイントは『水しか減っていない』ということです。
 つまり脱水後の汚泥全体の重量は6÷0.2 = 30トンとなりました。
 ろ液量とは減った水の量と等しいので、200(元の汚泥量) - 30(脱水後の汚泥量) = 170トンとなります。


 よって答えは(3) 170 になります。


 ポイントは「固形物量は減らない、減るのは水だけ」です。


 図を書きながら解くとさらにわかりやすいです。


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H19年度 問24より


ある工場の排水処理施設からの放流水のBOD を測定したところ、12mg/L であった。排水処理施設には、A、B の2 系統の流入水がある。A 系統の流入水は1800m3/日であり、B 系統の流入水は200m3/日、BOD 濃度600mg/L である。排水処理施設のBOD 除去率を95%とすると、A 系統の流入水のBOD 濃度(mg/L)はいくらか。
 (1) 100    (2) 200    (3) 300    (4) 400    (5) 600


解説


1.A系統のBOD濃度をX(mg/L)と置く。


2.その状態で、濃度×水量でBOD成分の総量を式をつくる(この時Xは残ったまま)
 B系統 200×600×1000(リットル表記で統一)=1200×105mg
 A系統 X×1800×1000=18X×105mg
 合計=1200×105mg+18X×105mg


3.この総量は排水処理施設によって95%除去される。
 (0.05をかける)
 (1200×105+18X×105)×0.05


4.総量を合計水量(1800+200=2000)で割ったものが最終濃度(12mg/L)になる。これを方程式であらわすと、
 (1200×105+18X×105)×0.05/(2000×1000)=12
この方程式のXを求めると、200mgとなる。


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これから数を増やして行きますのでどうぞよろしくお願いします。


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