テレビや小説で大人気の「下町ロケット」。
この中で「下請法」というキーワードが出てきます。下町ロケットの中で帝国重工の的場俊一はいわゆる「下請けいじめ」をするようになります。それがきっかけで、帝国重工は下請法違反で訴えられます。この結果、的場俊一は帝国重工を退職せざるを得ない状況に追い込まれます。。
と、こんな流れなのですが、そもそも「下請法」という言葉になじみのない方も多いのではないでしょうか? この「下請法」の内容は、下町ロケットの中で非常に大切な扱いです。さらに、僕が担当している「生産管理、経営工学」の仕事にも密接に関係があります。
この記事では、
下町ロケットを楽しむために知っておきたい「下請法」について簡単に説明しようと思います。
「下請法」は正式名称ではありません
下請法の正式名称は、
下請代金支払遅延等防止法 です。
下請法という名称は正式名称では【ない】ということを知っておくとよいでしょう。
下請法の目的
下請法の目的は「下請取引の公正化・下請事業者の利益保護」とされています。
従来、大企業から仕事を受注する中小企業は立場が弱いことが多く、不当な扱いや取引条件を突きつけられてしまうことがありました。これを防止するために、いわゆる「下請法」が存在しています。
下請法の適用範囲とは
下請法の対象となる取引は事業者の資本金規模と取引の内容で定義されます。以下の通り2パターンの下請法の適用範囲があります。
【パターン1】物品の製造、修理委託及び政令で定める情報成果物、役務提供委託を行う場合
物品の製造、修理委託及び政令で定める情報成果物、役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理関係等)、プログラムの作成委託等の取引の場合、以下の取引が下請法の対象となります。
- 親事業者の資本金が3億円を超えている ⇒ 下請事業者の資本金が3億円以下
- 親事業者の資本金が1千万円を超えて3億円以下 ⇒ 下請事業者の資本金が1千万円以下
下町ロケットの中では、以下のような構図となっていると思われます。完全に下請法対象の取引ですよね! ですので、下町ロケットの中での下請法の適用パターンはこの「パターン1」の内容であると考えてください。
下町ロケットの取引内容は以下の点で【パターン1】に当てはまっていると言えますね。
- 取引内容:部品の製造(物品の製造)
- 帝国重工:資本金が3億円を超えている
- 下請事業者:資本金が3億円以下と思われる
【パターン2】その他の情報成果物作成・役務提供委託を行う場合
その他の情報物作成委託・役務提供委託の場合、以下の取引が下請法の対象となります。この取引は下町ロケットのパターンとは異なります。
- 親事業者の資本金が5千万円を超えている ⇒ 下請事業者の資本金が5千万円以下
- 親事業者の資本金が1千万円を超えて5千万円以下 ⇒ 下請事業者の資本金が1千万円以下
親事業者の義務
下請法では親事業者に対して以下の4つの義務を課しています。
- 書面の交付義務
発注日、発注内容、納期、納入場所、金額、支払い期日などの情報を書面にし、渡さなければならない。 - 支払期日定める義務
物品を受領した日から60日以内の出来るだけ短い期間内で支払期日を定めなければならない。 - 書類の作成・保存義務
取引に関わる書類を2年間保存しなければならない - 遅延利息の支払い義務
支払期日までに支払わない場合、遅延利息を支払わなければならない
一般的に会社は、支払いは出来るだけ【遅くする】、入金はできるだけ【早くしてもらう】方が得です。そうするとキャッシュフローが改善するので、経営状態が良くなります。ですから大企業は立場の弱い下請事業者への支払いを遅らせることがありました。
このように支払いを遅延させる事が無いように、以上の4つの義務を課しているのです。
親事業者の禁止事項
下請法では、親事業者が以下のような対応をすることを禁止しています(11項目)。
- 受領拒否
不良等、正当な理由がない限り受領しなければならない - 支払遅延
支払い期日までに支払わなければならない - 減額
正当な理由なく減額できない - 返品
正当な理由なく返品できない - 買いたたき
不当に安い値段で購入してはならない - 購入・利用強制
正当な理由なしに親事業者が自社の指定する製品、原材料を強制的に購入させたり、サービスを強制的に利用させてはならない - 報復措置
下請事業者が公正取引委員会や中小企業省へ親事業者の違反行為を知らせたことを理由にして、不利益な扱いをしてはならない - 有償支給原材料等の対価の早期決済
有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすることをしてはならない。 - 割引困難な手形の交付
手形機関が120日を超える長期手形等、一般の金融機関で割り引くことが困難な手形を公布し、下請事業者の利益を不当に害してはならない。 - 経済上の利益の提供要請
金銭・役務等の経済上の利益を要求することで、下請事業者の利益を不当に害してはならない。 - 不当な給付内容の変更・やり直し
下請事業者に責任がないのに、発注を取り消したり、変更させること、また、受領後にやり直しさせる等の下請業者に不利益がある行為の禁止。
下町ロケットでは何が理由で「下請法違反」となったか?
下町ロケットの中で帝国重工は下請法違反で訴えられます。
的場俊一は、ライバル会社と取引がある下請会社との取引条件を不当に変更することで、事実上、下請会社との取引を一方的に停止させたのです!
この対応は事実上、不当に契約内容を変更していることになると思います。ですので、「不当な給付内容の変更・やり直し」「下請代金の不当な減額」などに違反しているという扱いなのでしょうね・・。
的場がついに、辞任しました!!
おーー!
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下請法についてさらに詳しく知りたい方は
公正取引委員会が下請法に関する説明のページを作っています。このページは分かりやすく解説されています、ぜひ、読んでみてくださいね。