ライフサイクルアセスメント(LCA、Life cycle assessment)は技術者の共通課題であるといえます。その証拠に技術士試験、公害防止管理者試験など様々な資格試験で出題される項目です。しかし、意外と知っているようで知らないんですよ。僕の場合がまさにそうです(笑)。
ですから、僕自身の勉強もかねて、この記事ではライフサイクルアセスメントについてまとめてみます。
JISの定義
以下に、JIS Z8141-2406に定義されている、LCAの定義を記載しています。
製品の原材料の採取から製造、使用及び処分に至るプロダクトライフサイクルを通じて、環境側面と潜在的な影響を調査・評価する環境マネジメントの手法
僕は技術士試験でどのように回答したか?
実は、僕が技術士試験を受験した2017年、経営工学部門でもLCAに関する出題がありました。
以下のような問題です。
生産マネジメントシステムにおいては、従来のQCD(Q:Quality、 C:Cost、D:Delivery)に基づく評価に加え、環境E(Environment)も考慮したPDCAサイクルによる継続的な改善が求められている。例えば、品質マネジメントシステムの国際標準規格であるISO9001や、環境マネジメントシステムにおけるISO14001においてもその序文において、PDCAに関する記述がなされている。以下の質問に回答せよ。
(1)生産プロセスを見える化するツールとして工程分析図が挙げられる。分析図で使用される加工、運搬、貯蔵、停滞、検査(数量・品質)に関する工程図記号(JIS Z 8206)を示し、その具体例について表にまとめよ。
(2)これまでの業務において取り扱ってきた生産プロセスについて、工程図記号を用いて示し、各工程において考えられる環境側面を挙げよ。
(3)上記(2)の生産マネジメント業務に基づきPDCAサイクルのモデル図を示し、P、D、C、A各々について具体的な例を挙げ説明せよ。特にCに関してはシステムの定量的な評価指標を示して、説明を行うこと。
(4)製品に関する環境面での評価技法の1つとして知られるライフサイクルアセスメント(LCA)について説明せよ。また、これまでの業務において扱ってきた上記(2)の製品を例に挙げ、LCAの観点からその製品のライフサイクルを図示せよ。
平成29年(2017年度)技術士 二次試験 経営工学部門試験問題より
僕は、この問題の(4)に対する回答の一番最初に以下のような文章を書きました。
ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、製品の材料調達から肺客に至るまで(ゆりかごから墓場まで)の環境影響を評価する手法である。・・・・
この論文でA評価をもらえていました!
ですので、LCAに対する説明として僕の書き方は参考になるのではないかと思います。
LCAが必要な理由とは?
例えば、あるエアコンの二酸化炭素排出量について検討するとします。
A社のエアコンは「超省エネ」という謳い文句で販売されています。他者と比べてエネルギー消費が少ないため二酸化炭素排出量も少ないという考えです。
環境に対して意識が高い消費者は、「どうせなら環境負荷が小さいエアコンを購入しよう」と考えてA社のエアコンを購入します。
しかしながら、それですべての側面をカバーできているといえるでしょうか?
実は、A社のエアコンについて以下の情報を知ってしまったらどうでしょうか?
- 製造プロセスでのエネルギー消費量が他のエアコンと比較して大きい
- 海外から運んできているので、運搬による二酸化炭素排出量が大きい
- 廃棄する際のエネルギー消費が大
- 結果的に、A社のエアコンの材料調達、製造、運搬、使用、廃棄・・までのトータルの二酸化炭素排出量は他社のより圧倒的に多い
この場合A社のエアコンが本当に、環境負荷が小さいといえるでしょうか?
そして、環境に対して意識が高い消費者はこのエアコンを購入するでしょうか?
そんなはずはないはずです(笑)。
このように、その製品の生涯全体の環境負荷について考えないと、正確かつ公平な環境評価が出来ませんよね。
そういう意味で、LCAは非常に重要であるといえます。
LCAの課題
LCAには以下のような課題があります。
- SCMが国際化かつ複雑化しているので、ライフサイクル全体での評価が困難である。
- 比較する対象同士の性能が明らかに違う場合、単純に比較することに意味がない場合がある。
- 評価する者によって、評価が恣意的に変化してしまうことがある。
上記のような課題をクリアしていくために、公平な評価手法を確立する、また、第三者機関等に評価を委託するなどの対策をとる必要がります。
このようなLCAの進め方についてはいろいろなところに資料がありますので、探してみてください。
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