デカップリングポイントと言う言葉を聞いたことがありますか?
BTO方式と言う言葉を聞いたことがありますか?
これらの用語は、おそらく工場での生産活動にかかわったことのある方なら一度は聞いたことがあるはずです。しかしその言葉をきちんと理解されているでしょうか?
この記事ではBTOとカップリングポイントについて解説したいと思います。
BTO方式とは何なのか? デカップリングポイントとは?
BTO方式は「見込生産」と「受注生産」をミックスしたような生産形態です。
BTOはBuild to Orderの略で、直訳すると「注文を受けてから組み立てる」という意味になります。これだけ聞くとまるで、受注生産のような印象を受けます。
しかしながら、この生産形態は「受注生産方式」ではありません。
「BTO方式」は部品生産、調達およびサブ組立(小組立)の一部までは見込生産の形をとりますが、最終組立は受注生産の形態をとる生産形態です。
そして、在庫としてストックするポイントを「デカップリングポイント」と言います。
図にすると以下のような流れです。
どこをデカップリングポイントとするかは「考え方次第」
ここでポイントなのは、どのレベルをデカップリングポイントにするかはその会社や工場の考え方次第であるということです。
A社は部品生産までしか「見越生産」を行いません。
B社はほぼ完成製品の手前まで「見越生産」を行います。
でも、A社もB社も「BTO生産をしている」と思っています。
そして、それはそれで全く問題がありません。
どこのレベルをデカップリングポイントとするかが企業にとって重要な戦略なのです。
B社は、お客さんから注文を受けて生産するまでのリードタイムが短いです。客さんからすれば、注文すればすぐに手に入る方が良いに決まっています。でもその分、完成品に近い状態で在庫を持っているので「在庫金額」が大きくなってしまう傾向にあります。
一方、A社はB社と比較して、上流側にデカップリングポイントがあるので「在庫金額」が小さいです。しかし、注文を受けてから部品を生産したりする完全な受注生産と比べると、リードタイムは短いですよね。
在庫金額が多いということは、企業にとってキャッシュフローを悪化させてしまう大きな原因となります。
しかし、リードタイムが短いことは、企業にとっては大きな強みになります。
リードタイムが長ければ、納期が長いことになります。納期が長いためにお客様を失ってしまう、いわゆる「機会損失」の状態になってしまうことがあります。
しかし、リードタイムが短ければ、注文から短納期でお客様の手に商品を渡すことが出来ます。商品が品切れだったり、納期が長いためにお客を失う可能性が低くなります。機会損失の可能性を低くすることが出来るのです。
これを、図にすると以下のようになります。
このように在庫金額とリードタイムはトレードオフの関係にあります。
このバランスをとるのは大変です。各企業が戦略的にベストだと思うポイントを「デカップリングポイント」として設定しているのです。
ですから、
A社もB社もそれぞれ戦略的にデカップリングポイントを決めているのです。
BTO方式の中で有名なのは「デルコンピューター」
BTO方式の中で特に有名なのはPCで有名な「デルコンピューター」です。
あまりにも有名なので「デル・モデル」と言うこともあります。
ですから、BTO生産についてもっと学びたい方はDell社の方式について学ぶとよいでしょう。
インターネット上にも様々な記事や資料があります。一例を以下に紹介します。
また、書籍も沢山出版されています。
山本一誠,MBビジネス研究班 まんがびと 2015-05-22
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中根 甚一郎 日刊工業新聞社 2000-08
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参考にするとよいでしょう。
各種資格試験の問題にも出題されています
BTO生産は非常に有名なので、生産管理系資格や製造関係資格の試験問題にも頻繁出題されます。特に、中小企業診断士や技術士などの国を代表するような難関資格にも出題されています。
今回は参考として、技術士(機械部門)での出題事例を紹介したいと思います。
技術士試験の場合、記述式で問われます。ですから、きちんと理解しておかないと回答が難しいですね。。。
サプライチェーンにおいて、見込み生産と注文生産の切り替え点、すなわちサプライチェーンプロセス中の分岐点をデカップリングポイントと呼ぶ。このデカップリングポイントは、一般に在庫を注文に引き当てる点となる。以下の問いに答えよ。
(1)任意の業界において、デカップリングポイントの具体的な例を1つ挙げて説明せよ
(2)デカップリングポイントがサプライチェーンの上流あるいは下流にある場合それぞれについて、デカップリングポイントと在庫の関係を説明せよ。
(3) (2)と同様の場合について、デカップリングポイントと機会損失(欠品)の関係を説明せよ。
(平成29年 2017年 技術士二次試験 機械部門 試験問題より)
このような問題が出ても、
今日説明した内容が理解できていれば回答できるはずですよね!