毎年更新している「公害防止管理者 過去試験の合格率データなど」。
今年も、昨年同様 新型コロナウイルス感染症が猛威を奮っている中での試験実施でした。
そんな2021年度の公害防止管理者試験の試験結果を詳しく見てみましょう。
まずは全体像!
以下が、公害防止管理者試験が始まってから現在までの受験者数と合格率の推移です。
上のグラフは、公害防止管理者試験の第1回(昭和46年度)~第51回(令和3年度)までの試験の合格率と受験者数の推移です(棒グラフは受験者数、折れ線グラフは合格率を表しています)。
グラフからも分かるように、合格率は平均として、20%~30%の間のようです。
今回の合格率は28.9%で、前年度の合格率26.0%から2.9ポイント上がりました。
ちなみに、合格率が大幅に下がっている年は、科目合格制導入後の各科目60点以上の合格基準になった平成19年度です。
年々、公害防止管理者試験の受験者数が減ってきているとはいえ、ここ最近5年間の受験者数は平均すると 約22,000人ぐらいです。
今年は、前年度よりも受験者数が減り19,946人で、とうとう20,000人を下回ってしまいました。
ここ最近10年間の中で最も受験者数が少なかったです。
さらに、パレート図で今までの累積公害防止管理者数を表現してみました。
下のグラフがそれです。
合格者総数が一番多い試験区分は、
(1)水質1種です。続いて(2)大気1種、(3)騒音、(4)水質4種、(5)水質2種、(6)ダイオキシン
となっています。
以上の6区分で公害防止管理者合格総数の約8割を占めています。
従来の「騒音」、「振動」という区分はなくなりました。
その結果、今後は「騒音・振動」が徐々に増えていくと思われます。
少しマニアックに掘り下げてみます
今までの内容は、ごく一般的な内容でした。以降は、少しマニアックに見ていきたいと思います。興味のある方はお付き合いください!!
2021年公害防止管理者試験の棄権率は??
資格試験というのは当たり前ですが、受験しなければ絶対に合格することはありません。
しかしながら、色々な都合や勉強不足などのため「棄権」される方が一定数おられます。
申込者:23,434人
受験者:19,946人
受験率:85.1%
棄権率:14.9%
以上のように、棄権率は14.9%となっています。
去年よりも棄権されている方が0.6%増えています
昨年度は棄権率が前年度(2019年度)2.5%増加していましたが、今年度は、その昨年度よりもさらに0.6%も棄権率が増加しています。
やはりこれは、新型コロナウイルス感染症が大きく影響を及ぼしていると思われます。
受験申込をしたものの、受験日当日も新型コロナウイルス感染症が収束していないことから、受験を見送られた人もいたのではないでしょうか。
ちなみに、同じく設備系の資格である電験三種と比較してます。
2021年度の電験三種の受験申込者数は53,685名、これに対して受験者は37,765名となっています。つまり受験率は70.3%です。つまり、棄権率は29.7%!
公害防止管理者試験の棄権率は電験三種の棄権率の半分以下です。
ということは、公害防止管理者試験を受験される方々は律儀に受けに行かれる方が多いのが特徴なのかもしれません。
受験料も上がったので、もったいない思いから皆さんきちんと試験を受けられるのですかね。
科目免除者と全科目受験者の割合及び棄権率や合格率の違いは?
公害防止管理者試験は科目合格制度が導入されています。そのため不合格だった場合でも、どれか1つでも合格した科目があれば、次に試験を受ける場合申請をすればその教科は受験免除になります。免除の期間は合格した年の初めから3年以内となっています(公害防止管理者試験の科目試験免除についてを参照してください)。
(例)大気4種の場合
試験科目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 |
---|---|---|---|---|
公害総論 | ○ | 免除 | 免除 | ○ |
大気概論 | × | ○ | 免除 | 免除 |
大気特論 | × | ○ | 免除 | 免除 |
ばいじん・粉じん特論 | × | × | × | ○ |
合格判定 | 不合格 (科目合格) |
不合格 (科目免除) |
不合格 | 合格 (資格取得) |
では、2021年度の試験の、科目免除者の割合はどうなっていたでしょうか??
2021年度のデータ
- 受験者:19,946人
- 科目免除なし:8,497人
- 科目免除あり:11,449人
- 科目免除者の割合:57.4%
以上のように科目免除者の方が多い「57.4%」となりました。
平成17年度から始まった科目免除制度がかなり浸透してきたことがうかがえます。
では、科目免除申請者と科目免除なしの受験者の棄権率に違いはあるのでしょうか。
科目免除あり | 科目免除なし | |
---|---|---|
申込者数 | 12,683 | 10,751 |
受験者数 | 11,449 | 8,497 |
棄権率 | 9.7% | 20.9% |
合格者数 | 4,778 | 996 |
合格率 | 41.7% | 11.7% |
上の表からもわかるように、科目免除ありの受験者よりも科目免除なしの受験者の方が棄権率が11.2ポイントも高いです。
さらに、合格率も科目免除ありの受験者方が、科目免除なしの受験者よりも30ポイントも高いことがわかりました。
合格者の方の多くは科目免除申請を行って合格していることが分かりました。
2021年度公害防止管理者試験の区分ごとの合格率
- ダイオキシン類の合格率が最も高くなっています
- 昨年は水質1~4の中で水質3種が最も合格率が高かったのに、今年度は水質1種の合格率が最も高くなっています。
- 大気1~4の中で大気1種が最も合格率が高い!のは昨年と変わりがないようです。
- 昨年と比較して水質1種の合格率が大幅(8.1ポイント)にアップしています。
やはり、ダイオキシン類の合格率の高さが際立ちます。
ですからまず、ダイオキシン類を受けて合格し、それから他の区分をチャレンジするのも良い戦略かもしれません。
そうすれば公害総論の科目免除が生涯有効になります。公害総論の科目免除があれば他の区分の試験を受けるときにもずいぶん楽になると思います。
大気一種は公害防止管理者試験の中で最高に難しい区分だと思っています。
それにもかかわらず、大気一種の合格率は比較的高い「26.2%」です。当然、1種より科目数が少ない「2~4種」の方が試験の難易度は易しいです。しかしながら合格率の点で見ると逆転現象が起こっています。このことを考えると、大気一種を受ける方のレベルが高く、学習意欲が高いことが考えられます。
それに対して、一番簡単なはずの大気4種が大気の中では最も合格率の低い「15.8%」です。
参考までに昨年の区分ごとの合格率データも以下に示します。
各受験会場ごとの特徴とは?
各受験会場ごとに合格率に違いがあるのだろうか?と思い調べてみました。
少し細かい作業になりますが、令和3年度の公害防止管理者等国家試験の概要から数字を引っ張ってきました。
(参考資料:社団法人産業環境管理協会 令和3年年度国家試験結果の概要)
頑張って調べてみました!
まずは生データです。各試験会場ごと、各区分ごとの合格者数を調べて各試験会場ごとの合格率を計算しました。色付きの数字は最上位を示しています。
(ただし、那覇市の数には全科目免除者も含まれているので、考えないものとしました。)
受験者が多い東京会場が、最も多い合格者数を誇っているのは例年通りですね。
しかし、やはり以下の点が気になります?
受験者が少ない北海道会場の一般粉じん合格者は例年同様に多いです。
各会場の一般粉じんを受験した人の割合を求めてみました。
北海道以外の地域では全受験者の中のうち一般粉じん関係の受験者が1%いるかいないかぐらいなのに対して、北海道だけ6.6%と突出しています。
その割合の多さがグラフにしてみると更によくわかると思います。
北海道と他の受験地との差が一目瞭然ですね。
北海道の環境・公害問題に何らかの特色があるんですかね・・・。