これまでに設備の稼働率やメンテナンス性を評価するために必要な指標に関する記事を書いてきました。しかし稼働状態やメンテナンス等にかかわらず、設備はいつしか「寿命」を迎えてしまいます。
今回の記事ではこの「設備の寿命」に着目し、この一般的な考え方である「寿命特性曲線(通称:バスタブカーブ)」について解説しようと思います。
寿命特性曲線(バスタブカーブ)とは
以下にバスタブカーブの解説をしていきます。
英語では何というの?
英語では以下のように言います。
- 寿命特性曲線:longevity curve
- バスタブカーブ:bathtub curve
まぁ、そのままですよね(笑)
寿命特性曲線(バスタブカーブ)の解説
縦軸に故障率をとり、横軸に時間をとって設備の故障率のグラフを作ると一般的に「バスタブの形に似た」形になります。以下の図の通りです。
なぜ時間の経過ともに一次関数的に故障率は増加しないのでしょうか?
なぜ設備導入の初期の段階では故障率が高いのでしょうか?
その理由は、「初期故障期」「偶発故障期」「摩耗故障期」の三つの言葉を学ぶと理解しやすいです。一つずつ解説していきます。
(1)初期故障期(DFR)
設備の使用開始直後には設計、生産時の不具合に起因する故障が発生しやすいです。この期間を初期故障期と言います。
例えば、設計的にミスがあって「稼働する部品同士が干渉した」「オイルシールの選定を間違っていたので油漏れ発生する」などの原因が引き金となり、設備が故障してしまうことが考えられます。また、生産時に「アライメント調整をミスした」「ボルトを規定トルクで締結していなかった」などのミスをしてしまうかもしれません。このようなミスも故障につながります。
しかしながら、このような不具合は時間の経過とともに、その不具合原因が取り除かれ改善に向かうのが一般的です。
ですのから、初期は故障率が高く、だんだん下がっていく傾向があります。
これが初期故障期です。
(2)偶発故障期(CFR)
これは初期故障期がおちついて、故障の原因が「偶発的なものだけ」いなっている期間のことです。この期間の故障率は一般的には安定している傾向です。
(3)摩耗故障期(IFR)
設備の寿命に近づき、いろいろな箇所が劣化してくるために故障率が上昇する期間のことです。この時期になると設備の更新やオーバーホールを検討しなければなりません。
以上のように、設備は以下のようなステップを踏んで劣化していきます。
(1)初期故障期 ⇒ (2)偶発故障期 ⇒ (3)摩耗故障期
ですから、図のように、
故障率は高い、下がって、また上がるという流れになっていくんです。
しかしながら、当然ですが適切な保全活動を実施すれば寿命は長くなります。バスタブカーブの理論を理解したうえで、適切な保全を行い寿命が長くなるようにするのも、技術者の重要な役割ですね!
各種試験ではどのように出題されるの?
この寿命特性曲線(バスタブカーブ)は各種試験で頻出!
重要な用語です。
例えば、技術士(経営工学部門、機械部門、電気電子部門、総合技術監理部門)、機械保全技能士検定、自主保全士、ビジネスキャリア検定(生産管理)、中小企業診断士試験などでも出題範囲です。そして、情報系の試験でも時々出題されているようですね(応用情報処理技術者試験)。また、QC検定でも出題範囲となっているようです!
そして注目していただきたいのが、技術士の総合技術監理部門(通称:総監)のキーワード集の中にもこの言葉が掲載されていることです。要は、技術者なら必ず知っておいてほしい!と言うことなんだろうと思います。
⇒技術士たちの間で話題になっている「総合技術監理 キーワード集 2019」を読んでみた
【参考】
では、実際の出題例を見てみましょう!
平成28年度 技術士(経営工学部門) 5択問題より
次のうち、寿命特性曲線(バスタブカーブ)が表しているものとして最も不適切なものはどれか。
(1)設備故障率の時間的変化を示している。
(2)曲線の形状が浴槽(バスタブ)に似ている。
(3)新しい設備の使用開始直後は故障率が低いことを示している。
(4)設備は初期故障期間の後、偶発的な故障が発生する期間となる。
(5)設備寿命に近づくと故障率が上昇する摩耗故障期間となる。
まとめ
このように寿命特性曲線は技術者なら絶対に理解してほしい内容です。
詳しく学びたい方のために、保全にかかわる参考書籍を紹介しておきます。
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