新型コロナウイルス問題とBCPと製造技術者 設備保全とサプライチェーンに注目して

最近、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な流行により、僕たち技術者も感染病の流行という形でBCPについて考える機会が多くなりました。今回は、感染病の流行と技術者が考えなければいけないBCPについて記載していきたいと思います。

BCPとは

BCP(事業継続計画、Business continuity plan)

自然災害伝染病の流行テロインフラからの断絶情報システムのトラブルなどを経験すると企業は事業へ大きな影響を受けたり、最悪の場合、事業が継続できず倒産してしまう可能性があります。

このためにBCP(事業継続計画、Business continuity plan)を立てておき、上記のような状況が発生しても事業への影響を少なくし、事業を継続できるようにすることが必要です。

BCPの主な特徴としては、災害などの問題(インシデント)の種類ではなく影響の深刻度(インパクト)に注目し、事業活動の低下や中断の期間を短縮するための企業の復旧力(レジリエンシー)を重視することが挙げられます。このインパクトに着目した評価がBIA(Business Impact Analysis)とも呼ばれます。

今までは自然災害に着目してBCPが語られることが多かった

日本は今まで東日本大震災や各地で発生した豪雨災害など、いわゆる「自然災害」に着目してBCPが語られることが多かったような気がします。

しかし、今回の新型コロナウイルスの問題によって、

「自然災害以外のインシデントに関してもBCPをしっかりと作成しておかなければならない」ということに気づかされています。

これは、僕たち技術者も皆が気付いていることではないでしょうか?

新型コロナウイルス蔓延による製造業への影響とBCP

新型コロナウイルス問題は製造業に非常に大きな影響がありました。

2020年度版、「ものづくり白書」を参考にしながら考えてみたいと思います。

まずは、以下のスライドを見てください。

(ものづくり白書より)

このスライドの中にあるように、新型コロナウイルスの日本への製造業への影響は当初、自動車産業等のサプライチェーンへの影響という形で現れました。その後、自動車業界のみならず他業種の企業に影響を与えており、個人消費や設備投資が大きく減少して、景気が悪くなっている状況です。

以下の2つの点は技術者として注目できる点だと思います。

  • サプライチェーンへの重大な影響
  • 世界的な需要の衰退により設備投資ができにくい状態

製造業はより柔軟なサプライチェーンの構築が必要

製造業は1980年代半ば以降、グローバルサプライチェーンを構築してきました。

しかしながら、今回のコロナウイルスの問題により、サプライチェーンの不確実性に注目が集まりました。グローバルサプライチェーンの寸断のリスクが高まってきたのです。このため、効率性だけではなく「柔軟性を備えたサプライチェーンの構築」が必要となってきました。

ものづくり白書の中では、以下のスライドのようにそのことが示されています。

特に、製造業では、中国を中心としたサプライチェーンが形成されることが多かったです。

今回の新型コロナウイルス問題では中国を中心としたサプライチェーンのみを構築していた企業は大きな影響を受けてしまいました。このような状況を防ぐためには、「ある国からの調達が断絶となっても成立する柔軟なサプライチェーンの構築」を目指す必要があります。もちろん製造拠点を一部国内に回帰することも必要と思われます。

このことは製造業のBCPとして非常に重要だと思われます。

設備老朽化への対応

新型コロナウイルスの問題による需要減少に伴い、企業は設備投資ができにくい状況となっています。そのことが以下のスライドにも示されています。

このような状況で技術者には何が求められるでしょうか?

古い設備を長く使い続けなければなりません。

「効率的な設備保全」や「信頼性の高い生産ラインの構築」が求められると思います。

例えば、設備保全の業界では以下の3つの保全方式があると言われています。

  • 事後保全
  • 時間基準保全(定期保全)
  • 状態基準保全(予知保全)

この中で現在、注目されているのは「予知保全」です。

予知保全は英語ではCondition Based Maintenance (CBM)と言います。

「状態基準保全(予知保全)」とは現在安定して稼働している装置に対して、機械の状態を監視して、劣化の状態に応じて都度保全する保全方式です。

例えば、設備の振動や発熱の状況および潤滑油の化学成分などをモニタリングして、その結果に応じて適宜保全を行います。この部分にIoTやAIの技術は非常に親和性が高いですよね。

ですから、それらの最新技術を適用しながら設備を保全を効率的に行う必要があります。こんなことが技術者の僕たちには求められそうですね。こんな点もBCPの中で重要になってきそうです。

なお、この保全方式については、設備の主な保全方式「3つ」についてまとめてみた 事後保全、定期保全、予知保全にかかわる件で詳しく紹介しています。また、バスタブカーブおよびMTBFの記事等も参考になると思います。

僕自身の悩み

僕自身は、今回の新型コロナウイルス問題で以下のような悩みを持っています。

  • 海外に出張に行けない中でどのように、海外生産拠点の品質を保証していくか?
  • 在宅勤務で仕事していくうえで、様々な問題を経験した
  • 国内の製造拠点の生産量減少に伴い、どのように生産管理していくか?

このような悩みを持たれている技術者も多そうですね。

次は情報システムについても考えなければいけない!

今回の新型コロナウイルス問題によりBCPの中の「感染症の流行」という問題にフォーカスが集まったように感じていいます。

今後は、災害や感染症以外の問題を考えておく必要があるのではないかと思います。

特に近年、情報システムは生産の根幹にあるものと言えます。

ネットワークが遮断されたり、攻撃された時への対応・・・なども考えておく重要性が徐々に高まっているように感じます。こんな時ですから、そういうことに注目したBCPの策定に力を入れるべきではないかなと感じています。

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