*この記事の内容は「生産管理の基礎知識」に収録されています。
QC手法の中でよく使用される「QC7つ道具」の一つ「管理図」について簡単に説明しておきたいと思います。
まずは、QC7つ道具とは何だったか? 復習しておきましょう。
それでは、今日注目する「管理図」について説明していきます。
5分で分かるように、簡単に、わかりやすく解説していいますよ。
管理図とは
管理図とはJISの中で以下のように解説されています。
連続した観測値もしくは群のある統計量の値を、通常は時間順又はサンプル番号順に打点した、上側管理限界線、及び/又は、下側管理限界点を持つ図。打点した値の片方の管理限界方向への傾向の検出を補助するために、中心線が示される。(JIS Z 81012-5.11)
ここで、覚えておいてほしいのは、「管理限界線」という言葉です。
そして「傾向を検出」と言う言葉です。
つまり、管理図とは以下を判断する道具なのです。
- 管理限界線が引いてあって、「その範囲の中で数値が管理されているかどうか」で工程に異常がないかどうか
- 管理限界線の中にあっても、「データの傾向におかしな点がないか」確認することで工程に異常がないかどうか
実際にx-R管理図を描いてみましょう
管理図の中でも最もよく用いられる「x-R管理図」を実際に書いてみることで理解を深めていきましょう。なお、この記事の中では「x-R管理図」と表記していますが、正確にはxの上に”ー(バー)”がついており、「えっくす ばー あーる かんりず」と読むことに注意してくださいね。
1.サンプルサイズ(n)と群の数(k)について
サンプルサイズ(n):サンプリングする標本の数
群の数(k):サンプルサイズ分をサンプリングしたの回数
1日に5個、30日間データを集めた場合は、n=5、k=30となります。
以下のようなデータが取れたとします。
2.群ごとの平均を計算する
3.各群の範囲(R)を計算する
群ごとの平均と各群の範囲を計算すると以下のようになりました。
読者の方に、表のミスをご指摘いただきました(内容を2021年7月19日に修正済み)。
4.管理図の中心線の計算
x管理図の中心線は、xの群の平均値のさらに平均値となります。
上の例でいうと、50.85が中心線となります。
R管理図の中心線はRの平均値です。
上の例でいうと1.41となります。
5.x管理図の管理限界線の計算
上方管理限界線:UCL
下方管理限界線:LCL とすると以下の式で計算される
なお、A2は群の大きさ(n)によって決定する係数です(下表を参照)。
サンプル の大きさ(n) |
x管理図 | R管理図 | |||
---|---|---|---|---|---|
A2 | D3 | D4 | d2 | d3 | |
2 | 1.88 | 3.27 | 1.128 | 0.853 | |
3 | 1.02 | 2.57 | 1.693 | 0.888 | |
4 | 0.73 | 2.28 | 2.059 | 0.880 | |
5 | 0.58 | 2.11 | 2.326 | 0.864 | |
6 | 0.48 | 2.00 | 2.534 | 0.848 | |
7 | 0.42 | 0.08 | 1.92 | 2.704 | 0.833 |
8 | 0.37 | 0.14 | 1.86 | 2.847 | 0.820 |
9 | 0.34 | 0.18 | 1.82 | 2.970 | 0.808 |
10 | 0.31 | 0.22 | 1.78 | 3.078 | 0.797 |
6.R管理図の管理限界線を計算
上方管理限界線:UCL
下方管理限界線:LCL とすると以下の式で計算される
なお、D4、D3は群の大きさ(n)によって決定する係数です(下表を参照)。
サンプル の大きさ(n) |
x管理図 | R管理図 | |||
---|---|---|---|---|---|
A2 | D3 | D4 | d2 | d3 | |
2 | 1.88 | 3.27 | 1.128 | 0.853 | |
3 | 1.02 | 2.57 | 1.693 | 0.888 | |
4 | 0.73 | 2.28 | 2.059 | 0.880 | |
5 | 0.58 | 2.11 | 2.326 | 0.864 | |
6 | 0.48 | 2.00 | 2.534 | 0.848 | |
7 | 0.42 | 0.08 | 1.92 | 2.704 | 0.833 |
8 | 0.37 | 0.14 | 1.86 | 2.847 | 0.820 |
9 | 0.34 | 0.18 | 1.82 | 2.970 | 0.808 |
10 | 0.31 | 0.22 | 1.78 | 3.078 | 0.797 |
7.以上のデータを折れ線グラフにすることで管理が完成
以上のデータを折れ線グラフにすることで管理図が完成します。
x管理図は以下の通り。
R管理図は以下の通り
(図のタイトルにご指摘をいただきました 2022/02/06修正済み)
上記の管理図を、以下の視点で確認します。
- 管理限界線の外に出ているプロットはないか?
- 点の並び方に傾向(くせ)はないか?
くせはないか? というのが抽象的でわかりづらいですよね(笑)。
しかしながら、JISに管理図の異常判定の基準という基準がありますので、それを参考にするとよいでしょう。
例えば、6点以上連続して上昇もしくは加工しているプロットがある場合以上とみなすなどのルールがあります。こちらのサイトで紹介されている説明がわかりやすかったです。是非参考にしてください。
まとめ
この記事では、管理図を簡単に説明しました。
管理図の考え方は、生産管理や品質管理の分野で非常に重要です。製造に携わっている方なら知っておきたい基礎知識でもあります。
それに、各種資格試験でも頻繁に出題されます。例えば、技術士(経営工学部門)やQC検定などでも頻繁に出題されます。
これらの資格の取得を検討されている方は是非、覚えておきましょう。
コメント
ΣXの求め方を教えて頂けないでしょうか?
単純にΣで総和で確認すると表の様にならないのですが、何か群毎に係数や定数が有るのでしょうか?
宜しくお願いします。
Σxの件ですが、考えた結果ですが、もしかして、Excel関数のSUMのセルの範囲を群番号も含めてないでしょうか?
順番に1➡2➡3と群番号に合わせて加算されているようです。
くだらないコメントスミマセン。
ヤマガタさま
そのとおりです。ご指摘ありがとうございます。
急いで修正しました。助かりました。
全体の管理図への影響はなかったです。
こんにちは
わかりやすい説明ありがとうございます。
細かいことですが下のグラフ、タイトルが”Rバー管理図”になっていますが”R管理図”ではないですか?
ご指摘ありがとうございます!
さっそくなおしておきます。