購買・調達・資材の業務をされている方は業界では「バイヤー(buyer)」と呼ばれます。「買い手」という意味で「バイヤー」と呼ばれるのだと思います。このような業務をしていると「バイヤーは買うのが仕事だから、ただ買えばいいんでしょ。単純に・・」という考え方になってしまいがちです。
でも、生産管理や経営工学の考え方からすると、
「買い方」が非常に重要なんです。
この記事では、購買・調達時の「原理原則」について経営工学の専門家の視点から、簡単に解説さえせてもらおうと思います。
1. 購買管理の5原則
購買管理には五原則があります。以下の通りです。
・品質管理
・数量管理
・納期管理
・価格管理
・取引先管理
上の5つの案件をバランスよく考慮して、購買管理をしなければなりません。
何か一つでも管理しなけれ、ば大きな問題が発生するでしょう。
資材・調達の仕事は何かを優先すれば、何かがおろそかになる。いわゆるトレードオフの関係が発生します。
どんな例があるでしょうか?
二つの例を挙げてみようと思います。そして、それぞれどんな原則が当てはまるか、分析手法を使えばよいのか、例を挙げて紹介したいと思います。
例1 たくさん買えば安くなるけど・・
1個ずつ買うより、10個単位で買えば安くなる。ということがありますよね。【価格管理】だけの面でいえば、安く購入できるほうが良いに決まってます。
でも、数量が増えることによって在庫が増えてしまいます。在庫発生すると在庫の管理費用も発生しますし、死蔵在庫となる可能性はないでしょうか?
【数量管理】の視点が抜けてしまうと、安いからジャンジャン買おうよ!となってしまいます。価格と数量をバランスをとって管理しなければなりませんよね。
経営工学の分野ではこのバランスのとり方を、経済的発注量という式で決定したりします。
経済的発注量(けいざいてきはっちゅうりょう、Economic Order QuantityまたはEOQ)とは、定量発注方式において、発注費用と在庫費用の総額を最小化する1回あたりの発注量のこと。経済発注量、最経済発注量、経済的ロットサイズとも言われる(Wikipediaより)
Q=√(2Rc/h)
Q:経済的発注量
R:1期あたりの所要量
c:一回の発注費用
h:1個1期あたりの保管費用
例2 安かろう悪かろう
安いんだけど、品質が悪いサプライヤーがあるとします。【取引先管理】【価格管理】【品質管理】等の視点から総合的に管理して、発注するかどうかを決めますよね。
安いからという理由だけで、取引をすると、後から痛い目に合うでしょう。まさに安かろう悪かろう状態です
経営工学の分野では様々な品質管理の手法が存在しています。例えばX-R管理図、工程能力などの計算式や評価方法、理論があります。これらの理論も多少の統計的な知識があれば、誰でも使用できます。勉強して業務に適用されることをおすすめします(算数・数学にアレルギーがある方にとっては少し難しいかも・・・・)。
このように、調達の担当者は「購買管理の5原則」を理解してバランスよく調達業務行う必要があります。それぞれの管理の上で、経営工学、生産管理的な手法を使用すれば、科学技術に基づいたアプローチで管理できます。ですので、購買の担当者は是非、経営工学を学んでほしいなと思うのです。
2.まずやってみてほしい【ABC分析】
ABC分析とは、購買品(部品や材料など)をいくつかのグループに分け、グループごとに発注の方式および在庫管理方式を検討するための分析手法の事です。
(1)部品の量もしくは金額別に並べてグラフを作成する。
(2)グループA、BおよびCに分けてグルーピングする。
図 ABC分析の例
こうすることで、それぞれのグループごとに調達の戦略を立てることが出来ます。
例えば、「Aグループの部品は高額だし重要だから、購入数量を減らそう。品質に信頼のおけるサプライヤから購入しよう」「Cグループの部品は大量購入で安くなるサプライヤから購入しよう、多少品質が悪くても容認する」等、購買管理の5原則をバランスよく考慮して調達の戦略を立てることが出来ます。
この分析方法は簡単です。
だれでもできます。
そして、効果が大きい!
だまされたと思って、使ってみてください。僕は生産管理の専門家ですが、調達の計画を立てる際に、必ずABC分析をするようにしています。そしてとても助かっています。
3.結論
- 購買・資材担当者はただ「買う」だけではなくて、購買管理の5原則をバランスよく管理してほしい。
- 経営工学、生産管理の分野では科学技術的なアプローチで管理項目を評価できる手法がたくさん存在している。
- 資材担当者には、ぜひ経営工学を学んでみてほしい
というわけで、最終的に経営工学の宣伝みたいになってしまいました(笑)。経営工学を学ぶには技術士(経営工学部門)試験へのチャレンジが一番です。まずは、1次試験から、チャレンジしてみてください。僕の、技術士になるまでの道のりも公開中です。