*この記事の内容は「生産管理の基礎知識」に収録されています。
QC7つ道具の一つである、「ヒストグラム」。
最近では中学校の数学(必修)の中でも取り上げられており、パレート図と同様に、誰もが教養として、たしなむ程度に知っておかなければならない分析手法の一つになってきています。当然、QCの分野や生産管理の分野でも非常によく使われます。
この記事では、技術士(経営工学部門)の僕が、ヒストグラムの基本と正しい作り方について出来るだけ簡単に解説していこうと思います。
と、偉そうに言っていますが、僕はあまり統計やQC手法得意ではないんですよ(笑)。技術士試験の前は、さすがに一生懸命勉強しましたが・・・・。
ですので、初心者目線で解説を書けているのではないかと思います。参考にしてください
ヒストグラムとは
ヒストグラムとは縦軸にデータ数(度数)、横軸にデータ数値の区間をとった棒グラフです。このグラフを見ることで、データの分布が正常なのか、不良品がどのように、どんな頻度で発生しているのかを分析することが出来ます。
最初に見た人は「あ、ただの棒グラフだな・・」という印象を受けるかもしれません。確かに棒グラフは棒グラフなのですが、ヒストグラムの描き方にはいろいろなルールがあります。そのルールを守っていないと、かっこ悪いし、正しく分析できません。
正しい、ヒストグラムの作り方を学びましょう!!
ヒストグラムを作成する手順
QC検定3級のテキスト(QC検定3級 テキスト&問題集)によるとヒストグラムの作成の手順は以下のようになっています。
- データ(数量値)を収集する
- データの中の最大値と最小値を求める
- 区間の数を決定する
- 区間の幅を決める
- 区間の境界値を決める
- 区間の中心値を求める
- 最終の区間まで、区間の境界値と中心地を求める
- 区間ごとの度数をカウントする
- ヒストグラムを作成する
言葉では分かりにくいので、実際に作成していきましょう!
ヒストグラムを実際に作成してみよう!
ある製品の直径(mm)をマイクロメータで測定しています。この製品の設計直径寸法はΦ90です。なお、許容寸法公差は±0.5mmです。
この製品の直径のデータからヒストグラムを作成していきます。
(1)データ(数量値)を収集する
マイクロメータで製品の寸法を計測した結果、以下のようなデータが得られました。
データ数は100個です。
(2)データ中の最大値と最小値を求める
データ中の最大値と最小値を調べます。
すると、以下のようになりました。
最大値:90.56
最小値:89.50
Excelなら、
=MAX(データ範囲)
=MIN(データ範囲)
など、関数で求めることが出来ますので簡単ですね。
(3)区間の数を決定する
区間の数は通常、以下の式で計算したものを用います。
今回の場合、データ数が100個でしたので、区間数は10となります。
(4)区間の幅を決める
区間の幅は以下の式に表されます。
今回の場合、最大値は90.56、最小値は89.50なのでそれらを代入します。
すると区間の幅は0.106となります。しかしながら、0.001の位はこの計測器では計れていません。測定の最小値は0.01です。ですので、測定の最小値の0.01に合わせて数値を丸めます。
結果的に、区間の幅は0.11と設定しました。
(5)、(6)区間の境界値と中間値を求める
区間の境界値(下限)、区間の境界値(上限)と区間の中間値を求めます。
それぞれ、以下の式で表されます。
代入する数値は以下の通りです。
最小値:89.50
最大値:90.56
測定の刻み:0.01
以上の式と数値に基づいて計算すると、第一区間(一番最初の区間)のについて以下が求まります。
区間の境界値(下):89.495
区間の境界値(上):89.605
区間の中心値:89.550
(7)最終区間まで順番に「境界値(上限)」、「境界値(下限)」、「中心値」を求めていきます
第一区間で求めた「境界値(上限)」、「境界値(下限)」、「中心値」の数値に区間の幅(0.11)を足せば、第二区間の「境界値(上限)」、「境界値(下限)」、「中心値」が求められます。これを繰り返して、最終区間まで計算を続けます。
(8)区間ごとの度数を集計する
各区間ごとに数値が何回出現するかをカウントしていきます。
以下のような表で集計していくのが一般的です。
Excelでは、条件付きカウント(COUNTIF関数)を使用することに、度数を簡単に計算することが出来ます。このやり方が分からない方は、COUNTIF関数の使い方をGoogleで検索するといっぱいわかりやすい解説が出てきますよ。
(9)ヒストグラムの作成
それでは、やっと本題のヒストグラムの作成に取り掛かりましょう。
流れは以下の通りです。
- 上記の区間ごとの度数を集計した表から棒グラフを作成する。
- 棒グラフと棒グラフの間の隙間が空かないようにグラフを調整する。
- 管理下限値(今回は89.5)と管理上限値(今回は90.5)の位置に線を引く。
- 平均値の位置に線を引く(今回は90.08)。
すると、以下のようなヒストグラムが完成しました!!
これで、ヒストグラムの作り方の基本はマスターできましたね。
ヒストグラムをどのように分析していくか?
ヒストグラムが完成したら、ヒストグラムがどのような形かを確認します。
一般的にヒストグラムには、以下の形があります。
- 一般形(工程が管理されている状態、良い状態)
- 離れ小島型(原材料などに異なる種類のものが混入している?)
- 絶壁型(規格値を飛び出した製品を選別して取り除いている?)
- 歯抜け型(測定が下手、ヒストグラムの区間分けが良くない?)
形によって起こっている品質特性・要因を推定することが出来ます。詳しいヒストグラムの見方をもっと勉強したい方は、専門の本やネットで調査してみてください。
「統計」が得意でない方にお勧めの一冊
僕の場合は、統計の手法があまり得意ではないので、以下の本が非常に勉強になりました。統計学を基礎から学びたい人におすすめの一冊です。最頻値、中央値、平均値、ばらつき、標準偏差などの言葉がちょっと怪しいなぁ・・という方にベストチョイスだと思います。
僕は技術士試験に受かった後も、時々この本を眺めて統計の基礎を復習しています。そうしないとどんどん忘れていってしまいます(汗)。最近、歳をとってきたのかなぁ・・・
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