業務の改善の原則として有名なのが「ECRSの原則」。
以下の二通りの読み方(呼び方)がありますね。
- いーしーあーるえすのげんそく
- いくるすのげんそく
この原則は経営工学、生産管理の分野でも有名な原則です。もちろん僕自身も仕事をしていく中でECRSの原則を常に意識するようにしています。それに、技術士(経営工学)の試験でもよく出題されます。このため、この原則については、何度も勉強しました。そして、技術士試験の論文の中でもECRSの原則について触れながら記載しました。そして、無事合格することが出来たんですよね。ですので、ECRSの原則は僕にとって、思い入れの強い原則です。
この記事では「ECRSの原則」と、それをあてはめるときの注意事項などをまとめてみます!
ECRSの原則(改善の原則)とは?
「ECRSの原則」は「改善の原則」ともいわれます。英語ではprinciple of improvementと称されます。直訳すると、まさに「改善の原則」ですね。
JISによると、定義は以下のようになっております。
生産管理用語(JIS Z8141)より抜粋
工程,作業,動作を対象とした分析に対する改善の指針として用いられる,E(eliminate:なくせないか),C(combine:一緒にできないか),R(rearrange:順序の変更はできないか),S(simplify:単純化できないか)による問いかけ。
少し簡単にまとめてみますね。
ECRSの原則とは以下の改善の指針の頭文字をとったものです。
E:Eliminate(なくせないか)
C:Combine(一緒にできないか)
R:Rearrange(順序の変更はできないか)
S:Simplify(単純化できないか)
改善をする際に、
「上記の考え方(指針)で改善できないかと考えるのが業務の改善をするのに非常に重要ですよ」という考え方がECRSの原則なのです。
しかもこの並び方、
E → C→ R → S にも意味があります。
この順番で検討していく必要があるのです。
それは当然そうですよね。
業務を改善して、早く、効率よく行いたいわけです。まず、その業務をなくす(Eliminate)ことが出来れば一番いいですよね。
1時間かかっていた仕事を30分でやるように改善するより、そもそもその業務を無くしてしまって0時間になれば非常に大きな業務改善になります。
このように、基本的にECRSの順番で検討することに意味があるのです。
日々の仕事の中で、当たり前のようにやっているけど省略できるものって無いでしょうか?無くせる業務はないでしょうか?
このような業務を見つけることが出来ればしめたもの!
この業務をなくすことで、ものすごい効果の大きな改善をすることが出来ますよね!
生産管理の分野ではどのように使われるか
生産管理や経営工学の分野では「工程分析」という分析手法がよく使われます。
工程分析とは工程分析記号を使って、生産の流れを分析することです。
工程分析記号もJISの中に定められています(JIS Z 8206)。ここでは、下の表のように主な工程分析記号(基本図記号)を紹介します。このような記号を使って、生産の流れを分析する(工程分析する)ことは生産管理の分野では基本中の基本となっております。
「生産管理用語辞典」の中には、以下のように記載されています。
(この本は、経営工学分野で非常に便利な本です)
はじめにする問いかけは「なくせないか?」である。工程分析の細かさで分析している場合にはそれぞれの工程に対してこの問いかけを行う。なくせない工程に対して次に、「一緒にできないか」および順序の変更はできないかという問いかけをする。それぞれの工程に対してもっと「単純にできないか」という問いかけをする。
この問いかけは工程よりもっと細かい分析(例えば作業分析)を行い、その各ステップに対して再びECRSの原則を適用することに対応する。
(生産管理用語辞典より)
生産管理用語辞典 | ||||
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適用する場合に注意してほしいこと
このECRSの原則を適用する際に注意してほしいことがあります。
先ほど、その工程や作業をなくすこと(Eliminate)することが最も効果が大きいということを説明しました。でも、「一見無駄に思えても省略してはいけない工程」があるんですよね。
いわゆる「近道行為」というものをすると社会的な責任を問われる可能性があります。
例えば、検査工程の中には絶対に省略してはいけないものがあります。法令で求められている検査や、品質を保証するうえで重要な検査工程を省略すると社会的責任を問われる可能性があります。他にも、製品に要求されている熱処理工程を省略しても「見かけ上、製品の形」になるケースがあります。しかしながら、製品品質を重大な影響を与えるため、絶対に省略は出来ません。
様々な企業でこのような工程を省略したことによってコンプライアンス違反に問われるケースが増えてきていますよね。
このように、どんな場合でも「無くせばいい」わけではないんです。
このことにはよーーく注意してほしいと思います!!