近年、日本では人材不足が叫ばれています。
このため、日本国内だけでの生産活動には限界があり、海外のリソースを利用するほかなくなってきています。外国人労働者がたくさん日本に来られています。海外拠点で生産活動をしたり海外サプライヤから調達することはどんどん拡大していくことと思われます。
僕は生産管理部門で海外生産、海外調達を担当しています。
そのなかで、頻繁に話題になるのが、
「どの国から調達するのが良いのか?」
と言う疑問です。これって、担当者にとっては非常に大きな悩みですよね。
これに対して、「ベトナムが良い」「やっぱりまだ中国だよね・・」「いや、人口急増中のインドでしょ!」などいろんな意見があると思います。そして、人によって言うことが違うんですよね。それに、相反するどの意見にも一理あるような気がします。
そういう意見を聞いていると、さらに悩んじゃうんですよね・・・。
今日は、そんな海外調達、購買、資材担当者の方へのものすごく簡単なアドバイスを3つ紹介したいと思います。
国もそうだけど、「どの会社と取引するか」の方が重要
僕はヨーロッパ、中国、インド、ベトナム、韓国などいろんな国との取引の経験があります。その中で、気づいた重要なことがあります。
それは以下の二つです。
- どの国にも良い会社がある
- どの国にも悪い会社がある
確かに、どの国と取引をするかというのは重要です。
しかしながら上の二つの理由から、「どの会社と取引するのか」ということの方がもっと重要です。一見、良い会社に見えてもパートナーと付き合っていくには「考え方」「規模」「人材の豊富さ」「設備」「人件費」などがマッチしない場合もあると思います。
ですから、自社にとって本当に良いパートナーになってくれる会社を見つけましょう!
例えば、最初から「ベトナムの会社と取引するぞ!」と決めつけていたとします。でも、本当は中国の中にもっとも良いパートナーになってくれる企業があるかもしれません。最初から、「ベトナムと取引する」と国を決めつけてしまうことによりベストパートナーになれるはずの中国の会社と出会えないことがあります。
ですから、どの国と取引するかという問題以前に、
「どの会社と取引するか」
の方が重要ではないでしょうか。「どの国から」という枠からスタートせずに「良いパートナー探し」という観点でスタートしたほうが結果的にうまくいくケースが多いです。
国を分散してリスクを分散させることができる
海外調達をしていく中で、以下のようなリスクがあると思います。
- 為替変動リスク
- 地政学的リスク
- 災害・天候変動のリスク
- 政治上の理由による貿易の自由度が下がってしまうリスク
このようなリスクを考えた場合、一つの国に絞って調達活動をしてしまうとリスクが高くなってしまいます。数か国に分散させる事が上記のリスク分散につながります。
ですから、どこの国の会社から調達するか?と悩んだ時には、
「悩むくらいなら最初から数か国の会社と取引する」
と決めてしまった方が、良い結果が得られる場合が多いと思います。
まずは自社の購買戦略が何なのかを、再度考えておこう
購買管理には5原則があります。どこの国から調達するかを一生懸命に悩むより、まずは自社の購買戦略が購買管理の5原則に照らせ合わせて、どうなっているのかを再度確認するほうが重要です。
・品質管理
・数量管理
・納期管理
・価格管理
・取引先管理
この原則に従って各社で購買に対する戦略を検討されていることでしょう(調達の戦略検討にはABC分析が役立ちます。ABC分析など調達活動の戦略を検討するためには経営工学が役に立ちます。単に「買う」だけではダメ! 購買・調達担当者には【経営工学】を知ってほしい)。
場合によっては、購買管理の五原則のあてはめ方によっては、「海外調達したいと思っていたけど、日本での生産の方がウチの会社にはあっている」などの結論になることがあります。
ですので、どの国から調達するかを考える前に、
購買戦略が購買管理の5原則に照らせ合わせて再度確認
することを忘れないようにしましょう!
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そんな僕もうまくいっていないし、悩みも多い
以上のように、偉そうに言っておりますが、僕の海外生産・海外購買活動がいつも成功しているわけではありません。海外生産拠点における生産マネジメントで苦労話 あるある・・・で書いた通り、悩みも絶えません。。
正直言って、今も海外調達の中で色々悩みを抱えています。しかも、「取引先が全然こちらの要望・要求にこたえてくれない」「海外調達先担当者との人間関係が難しい・・・」など、結構レベルの低い話で悩んでいたりするんですよね。
海外調達・海外生産なんて最初からうまくいくはずがありません。何度も失敗をしてPDCAサイクルを回しながら、良い方向にもっていくしかありません。
まずは「やってみなければ」何も変わりません。辛いこともありますが、海外生産・調達の世界に飛び込むことを恐れないでくださいね!