昨今、新型コロナウイルスなどの感染症の対策のため「消毒液」が品薄になる傾向があります。最も一般的な消毒方法はアルコールによる消毒です。
僕は学生のころ、微生物やウイルスの研究をしていたことがあります。そういう研究室では70%の濃度のエタノールが消毒のために使われることが多いです。
70%程度のアルコールが最も良い理由
SNSを見ていると、
ビールを飲んでアルコール消毒だ!
焼酎を飲んでアルコール消毒だ!
みたいな投稿がありますが、その程度の濃度のアルコールだと実質的に殺菌効果はないと思って構いません(当然、ウイルスにも効きません)。
やはり、70%程度のアルコールが最も殺菌効果が高いです。
以下の表を見ていただくと、死滅時間が最も短く即効性が高いのが40~80%程度のエタノールであることが分かっていただけると思います(花王さんのホームページより)。
エタノール濃度 | 主なメカニズム | 死滅時間 |
---|---|---|
1~8% | 細胞内外の水素イオン濃度勾配、トランスポート系酵素阻害、ATP、RNAの合成阻害 | 静菌作用 |
8~20% | 細胞膜が傷つき菌体内成分が漏出、トランスポート系酵素阻害などで菌が餓死 | 30分~48時間 |
20~40% | カタラーゼが失活し、過酸化水素が生成。菌体内構造物が酸化変性し、死滅する。細胞膜が傷つき菌体内蛋白、RNAなどが漏出する | 10~30分 |
40~80% | 細胞膜、蛋白構造などが急激に変性、破壊する | 5分以内 |
80~99% | 細胞膜、蛋白構造などの変性、破壊が40~80%よりも少し遅くなる | 10~30分 |
なお、100%のアルコールより約70%の濃度のアルコールの方が殺菌効果が高いのかは花王さんのホームページの説明が詳しく、参考になりました。
飲用アルコールでも消毒用として利用可能
一般的に薬局等では「消毒用アルコール」が販売されています。
しかし、市販で販売されている「消毒用アルコール」を使用しなくても、アルコール濃度がおおむね「70%程度」のものであれば殺菌効果があるのです。
消毒用アルコールでなくても、機能上は70%程度の濃度のものを用意すれば消毒液として使用できる。。。例えば「スピリタス」というお酒は90%以上のアルコール度数です。
これを薄めれば、アルコール消毒液の代わりに使用できます。ただし、スピリタスの場合は「薄める」必要があります。
消毒にピッタリの濃度の飲用アルコールを発売!
ここに目を付けたと思われる酒造が現れました。
それが、高知県にある菊水酒造さんです。
アルコール77という商品で、その名の通りアルコール度数が77%。
ちょうど、消毒用として使用しやすい濃度となっております。
■菊水酒造 会社概要
所在地:〒784-0004 高知県安芸市本町4丁目6-25
URL:http://www.tosa-kikusui.co.jp
資本金:4,500万円
主要商品:日本酒、焼酎、リキュール、ラム酒、その他
菊水酒造さんのニュースプレスによると以下のように表現されています。
■製品概要
品名:アルコール77/原材料:醸造アルコール、香料/アルコール度数:77度
発売日:4月10日/価格:希望小売価格1,200円(消費税抜)
酒税:385円/本を含んでいます。
※当商品は消毒用アルコールと同等のアルコール分を含んでおりますが、消毒や除菌を目的に製造されたものではありません。
■代表取締役社長 春田和城より
当社は、2018年7月豪雨により甚大な被害を受けましたが、各方面から多大なご支援をいただきました。当社の有する製造設備等を活用して、皆様のお役に立てる製品を提供することで、恩返しにつながればと考えたものです。今後も各界のご指導のもと改善を尽くした製品を順次製造して参りたいと存じます。
(ニュースプレスより)
面白いアイデアだが、グレーゾーン。。。
一般に売られている消毒用エタノールは、「第三類医薬品」と「指定医薬部外品」に分類されているそうです。このうち、「第三類医薬品」は薬局など許可を得た箇所でしか販売できず、薬機法上は違法になるケースがあります。
我が家では第3類医薬品の消毒エタノールを使ってます。 pic.twitter.com/C9Yd9236wT
— めたのさえた(英会話×筋トレ) (@kougainet) April 5, 2020
今回の菊水酒造さんはあくまで「飲用」扱いとしていますので、薬機法の違反にはならないということが出来ます(酒類販売の法律で縛られる)。
ビジネスとしては非常に面白いところに目を付けた商品だなぁと感じますよね。
消毒剤がひっ迫している中、ニーズは大きそうです。
しかし、明らかに消毒用として生産していると思われ、
「グレーゾーンである」という見方も出来ます。
このため、twitterなどのSNSではこの件に関して、大きな盛り上がりを見せています。個人的には面白いところに目を付けたなぁ。。。と感心していますが。。。法律的に見た時どうなのでしょうね。
この菊水酒造さんの「アルコール77」が、今後どのような展開をしていくのか楽しみです。
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