*この記事の内容は「生産管理の基礎知識」に収録されています。
工程管理の有名な手法に、
PERT(Program Evaluation and Review Technique)というものがあります。
この手法はとっても便利で、私は大変、気に入っています。もちろん、仕事でよく使います。詳しい説明は書籍や詳しい説明等を読んでいただきたいのですが、簡単に私流に(笑)、PERT図を説明したいと思います。
PERT図を描くことで何が分かるのでしょうか?
あるプロジェクトにおいて、
①どの工程はいつまでに間に合わせなければいけないか?
②どの工程は最短では何日で終わるのか?
③ネックとなっている工程(もしくは工程のグループ)は何か?
④最短リードタイムはどのくらいか
・・・・・・
を知ることができます。
それで、これが仕事をやっていく上でどんなふうに役立つかと言いますと、
単純に言うと、
①頑張らなければいけないポイント(工程)が分かる。
②頑張らなくてもいいポイント(分かる)が分かる。
(頑張っても意味がない and/or 逆効果である ことさえある!!)
っというのが一番のメリットではないかと思います。
ネック箇所以外の工程を以外を、いくら短縮してもなかなか効果が出ません。それよりはプロジェクト全体の進行でネックとなっているところを攻めていきたい!そんな時に役立ちます。
しかも、これは大きないわゆるプロジェクトなんかではなくても、私生活や日頃のルーチン仕事でも使えます。
早く終わらせるためにはどうしたらいいか・・・を考える時に、一度PERT図を描いてみる(もしくは頭の中で描く←これは結構ハードル高い)ことができれば、シメタもの!。
もう、かなり改善(KAIZEN)に近づいていると言っても過言ではないでしょう!
・・・っということでPERT図を一度真面目に勉強すれば、世界観が変わりますよ。
人生が変わることだって、あると思います(笑)!!
なお、PERT図は経営学やIT関連の資格の学問の必修内容です。
技術士の経営工学部門、総合技術監理部門等でも必須です。
関係する勉強が必要な方は、学んでおいて損がないですね♪
それでは、ここから具体例に移っていきたいと思います。
今回は、我が家のカレー作りをPERTで分析した例を紹介したいと思います(笑)。
たかがカレー作りと思って侮るなかれ!!このカレー作りの事例からも、いろんなことが学べます。
1. カレー作りの作業と所要時間の洗い出し。
我が家のカレー作りの時間を計測すると以下のようになりました。
(1)お米を研ぐ・・・・(3分)
(2)野菜を切る・・・・(10分)
(3)米を炊く・・・・(45分)
(4)野菜を炒める・・・・(5分)
(5)肉を焼く・・・・(3分)
(6)具を煮る・・・・(10分)
(7)カレー粉を入れて煮る・・・・(5分)
(8)ご飯をつぐ・・・・(2分)
(9)ルーを入れる・・・・(3分)
2.並行して行うことのできる作業・関連のある作業の整理
お米を研がなければ、お米を炊くことはできません。
ご飯をお皿につぐ前に、ルーを入れる人はいません(入れる人もいるかもしれませんが・・・)。
これらの情報を整理すると以下の表のようになります。
3.PERTによる分析
上記の表を基にPERT図を作成しました。
最早・・・どれだけ急いでも、それ以上早くできない時間
最遅・・・最短工程に間に合わせるために、「ここまでなら待てる」という時間
余裕・・・最遅―最早=余裕 (その工程にどれだけ余裕があるか分かる)
赤線で表した工程のかたまり(クリティカルパス)が全体の所要時間(リードタイム)を支配していることが分かります。どれだけ頑張って、複数の人が並行して作業をこなしても赤線で示した52分よりも早く、作業を終了することはできません。
4.わかることは?
(1)赤線で示したクリティカルパスの作業時間を短縮しなければ全体が短縮されない
(その他の作業時間を短縮しても、カレーは早く出来上がらない)
(2)頑張ってルー作りをすると、ご飯が炊ける20分前にルーが出来上がってしまう。
(最悪の場合、冷めてしまうかも)
5.仕事でどんな風に役立つか?
(1)複数の作業(工程)が存在する仕事をする前に、所要時間が推測できる。
(2)どの工程が全体の所要時間を支配しているのかわかる。
これにより工程ごとに優先順位が付けられる
(3)クリティカルパス以外は、あえてゆっくり作業したほうがいい場合もある。
(3)はイメージしづらいかもしれません。今回はカレー作りという例で考えました。
しかし、ちょっと視点を変えて、このPERT図が量産品工場の生産ラインだと仮定してみましょう。生産を繰り返しているうちに、クリティカルパスとその他の作業が交わるところに仕掛り(在庫)がどんどんたまっていくのがわかると思います(カレー作りの例では、ルーがどんどんたまっていく)。つまり、クリティカルパスに合わせて生産を管理しなければ、仕掛(在庫)が増え続けますよ!ということなのです。
参考文献
・生産管理の基本としくみ
・アメリカ国防総省直伝 プロジェクト・マネジメント実戦教練ブック
・PERTのはなし―効率よい日程の計画と管理
・計画の科学―どこでも使えるPERT・CPM (ブルーバックス 35)
この内容が、この本に取り上げられています。