最近、コンカレントエンジニアリング(CE, concurrent engineering)いう言葉をよく聞くようになってきたと思います。僕たちエンジニアには共通して必要な知識だと思います。
また、情報系、機械系、建設系、電気系・・様々な資格試験に出題されがちなキーワードでもあります。これから、技術士など各種資格試験を受験する方は絶対に抑えておきたいですね。
ですから、この記事ではコンカレントエンジニアリングについて解説します。
コンカレントエンジニアリングとは
コンカレントエンジニアリングとは製品開発複数のプロセスを同時進行で行い、開発リードタイム短縮、コスト低減に取り組む技術です。
従来の製品開発は、以下のように直列で行われました。
(従来の製品開発)
開発・設計 ⇒ 試作 ⇒ 設計変更(不具合改善)⇒ 製造
それに対して、コンカレントエンジニアリングでは並行して行うことのできるプロセスを同時進行させます。これにより、リードタイムを大幅に短縮することができます。
当然、「時は金なり」ですから、コストも削減できます。
上の内容を図にすると以下のようになります。
こうするとイメージしやすいと思います。
図にすると一見、簡単なように見えますが、上のように連携して開発を進めていくためには設計部門、生産部門、資材部門など関係する部門が連携して進めなければなりません。これが意外と難しいんですよね。「コンカレントエンジニアリングをすすめるんだ!」という強い意志が必要です。
さらにコンカレントエンジニアリングには別のメリットもあります。
最初から各部門が協力して開発を進めていけば、
- こうやればもっとコストが低減できるのに
- こうすればもっと作りやすいのに
- もっと手に入りやすい部品に変えた方が良いのではないか?
など、改善アイデアに早めに気づくことが出来ます。
この「早く気づく」ということが非常に重要です。
すでに、設計が出来上がってしまった段階で、改善しようとしてもなかなか難しい場合が多いんです。
例えば、
ここはこうしたほうが絶対安いけど、他の部品との取り合いの関係で大幅な設計変更が必要だからできない・・・なんてことが実際の開発は結構頻発したりします。
最初から、各部門で連携して開発を進めていれば、そのような問題により早く対応できますよね。また、設計の後戻りも防げます。ですからコンカレントエンジニアリングは改善・コストダウンのためにも、有益です。
セットで考えたい「デジタルエンジニアリング」とは?
コンカレントエンジニアリングとセットで考えておきたい用語として「デジタルエンジニアリング(DE, Digital Engineering)」があります。
これは、「3D-CADなどのデジタルデータを全部門が連携して使用することで、モノづくりを効率よく行っていこう」という仕組みです。
3D-CADのデータというと設計部門だけが利用するデータと思われるかもしれません。でもこのデータを各部門がうまく使えば以下のようなメリットがあります。
- 試作する前に、事前に干渉などの問題がないか確認できる
- 重量等のデータが簡単に得られる。このデータを原価見積、運搬方法、などに有効に利用できる。
- 機械加工のNCプログラムと連動させることにより、簡単に加工用のプログラムが出来る。
- 治工具の設計、組立方法検証などが簡単に行える。
- 3Dの絵があるため、顧客への提案・説明がやりやすい・・・など
このようなメリットがありますから、先ほどのコンカレントエンジニアリングとセットで利用すれば、さらにリードタイム短縮、コスト低減が期待できます。また、顧客の獲得や営業活動がやりやすいなどのメリットもあります。
実際にどのように出題されたか?
今回は技術士試験の問題を中心に紹介したいと思います。
製品開発のプロセスを構成する複数の工程、例えば、製品設計、生産設計、物流企画、販売企画などを強調しながら並行で進めるアプローチはコンカレントエンジニアリングと呼ばれている。以下の問いに応えよ
(1)コンカレントエンジニアリングの目的を3つ挙げて説明せよ
(2)コンカレントエンジニアリングを実施する際の課題を、2つ挙げて説明せよ
(3) (2)で挙げた2つの課題を解決するための対策を、それぞれ述べよ
平成29年度(2017年度)の機械部門の技術士試験より
コンカレント・エンジニアリング・デザイン(同時進行設計)について説明し、その期待効果について述べよ。
平成28年度(2016年度)の機械部門の技術士試験より
このほかにも、様々な資格で出題される「コンカレントエンジニアリング」。
ぜったいに覚えておきたいですね。
原嶋 茂 日刊工業新聞社 2015-11-26
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