公害防止管理者(水質関係)を受験される方ならだれでもご存知のCOD(化学的酸素要求量)。僕は、意外と理論COD濃度の計算方法をご存知ない方が多い印象を持っています。
この記事では、公害防止管理者の方もしくは公害防止管理者を目指される方なら、誰もが知っておきたい「理論COD濃度」の計算方法を紹介させてもらいたいと思います。
そういえば、こんな感じの問題、僕が大学院入試を受験するときに出たような記憶があります(笑)。
理論COD濃度の計算方法
以下の例題を考えてみましょう。
【例題1】グルコース(ブドウ糖)を水に溶かしたと仮定した場合
1L(リットル)の水にグルコース(C6H12O6)を90g溶かした。
この時の化学的酸素要求量(COD)濃度(mg/L)はいくらか?
(1)グルコースの燃焼式(反応式)作る
グルコースは分解するとき、「酸素(O2)」を使って「二酸化炭素(CO2)」と水「H2O」になります。
つまり、
C6H12O6 + O2 → CO2 + H2O
という化学式となります。
上の化学式の各元素の数を数えてみます。
元素の種類 | 左側 | 右側 |
---|---|---|
C | 6個 | 1個 |
H | 12個 | 2個 |
O | 8個 | 3個 |
これでは、元素の数が釣り合っていませんよね! このままだと化学反応の式が成立していません。ですから、各元素の数をそろえる必要があります。
この場合以下の3プロセスが必要となってきます。
- 炭素(C)の数をあわせる。
- 水素(H)の数をあわせる。
- 酸素(O)の数をあわせる。
それでは実際にやってみましょう。
まずは、炭素の数を合わせます。左側の式に炭素が6個ありますので、
すると、
C6H12O6 + O2 → 6CO2 + H2O
とすることで炭素の数が合います。
元素の種類 | 左側 | 右側 |
---|---|---|
C | 6個 | 6個 |
H | 12個 | 2個 |
O | 8個 | 13個 |
次に水素の数を合わせます。左側の式に12個の水素がありますので、
C6H12O6 + O2 → 6CO2 + 6H2O
とすることで水素の数が合います。
元素の種類 | 左側 | 右側 |
---|---|---|
C | 6個 | 6個 |
H | 12個 | 12個 |
O | 8個 | 18個 |
最後に酸素の数を合わせます。右側の式に酸素が18個ありますので、
C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O
とすることで、酸素の数があいます。
元素の種類 | 左側 | 右側 |
---|---|---|
C | 6個 | 6個 |
H | 12個 | 12個 |
O | 18個 | 18個 |
これですべての元素の数がそろいました!!
つまり、グルコースの燃焼式は以下のようになります。
C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O
(2)グルコースの分子量の計算
グルコース(C6H12O6)には、C(炭素)が6個、H(水素)が12個、O(酸素)が6個あります。それぞれの原子量は以下の通りです。
- C(炭素):12
- H(水素):1
- O(酸素):16
原子量と原子の数を「掛けて」「足す」ことで分子量が求まります。
よって、分子量は以下のようになります
(12×6)+(1×12)+(16×6)= 180g
分子量とは分子1molあたりの重さのことです。
今回、グルコース90gを水に溶かしましたので、0.5molのグルコースを水に溶かしたことになります。
(3)理論CODの計算
グルコースの燃焼式(C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O)から
グルコース1molあたり、酸素分子は6mol必要であることが分かります。
CODとは燃焼するときの必要な酸素分子量のことです。
今回、グルコースを0.5mol溶かしましたので、必要な酸素量をAmolとすると、
C6H12O6 : O2 = 1mol : 6mol = 0.5mol : Amol
6×0.5 = 1 × Amol
A = 3mol
つまり3molの酸素分子が必要であることになります。
酸素分子の分子量は32gです(2 × 16 = 32g)。
今回、酸素分子が3mol必要なので、
3 × 32g = 96g
つまり、この96gがCOD(化学的酸素要求量)となります。
しかしながら、問題はCODをmg/Lの形で示すように求めていますし、一般的にCODはmg/Lで表されます。今回、1L(リットル)の水に96g(96,000mg)のCOD分を溶かしていますので、960mg/Lの濃度になります。
よって答えは、96,000mg/Lということになります。
じゃぁメタノールの場合はどうなるのか??
以上のように理論COD濃度を計算することが出来ます。
では、水処理でよく使われれる(特に脱窒反応)メタノールの場合はどうでしょうか?
ちなみに、メタノールの化学式は(CH3OH)です。
最初の燃焼式の立て方に苦労するかもしれません。
上記のグルコースの例を参考に考えていてみてください。
【例題2】メタノールの場合
メタノール32gを水2L(リットル)に溶解させたときの化学的酸素要求量(COD)濃度(mg/L)はいくらか?
【解答】
(燃焼式) 2CH3OH + 3O2 → 2CO2 +4H2O
(メタノールの分子量) 32g
(溶かしたメタノールのmol数) 32 ÷ 32 = 1mol
(必要な酸素分子)
CH3OH : O2 = 2 : 3 = 1 : Amol
A = 1.5mol
酸素分子 1.5molは 1.5 × 32 = 48g
(COD濃度の計算)
48g ÷ 2L = 24g/L =24,000mg/L
燃焼式の立て方は大気の問題でも役に立つ!!
今回は、理論COD濃度の計算式を学びました。
これは水質関係で役立ちます。
しかし、大気関係公害防止管理者試験でも同じような燃焼式を立てて解く問題が出題されます。
このように、大気でも水質でも役に立つ「燃焼式の立て方」は是非覚えておいてもらいたいと思います。
→ 大気特論 燃焼計算って難しい? を参考にしてください。